2003 Fiscal Year Annual Research Report
普遍的秩序・個別国家・地方――「我々」意識の歴史的発展と法の役割
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13420002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田口 正樹 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20206931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石部 雅亮 大阪国際大学, 政経学部, 教授 (90046970)
山田 欣吾 一橋大学, 名誉教授 (70017523)
石川 武 北海道大学, 名誉教授 (20000648)
石井 紫郎 東京大学, 名誉教授 (00009797)
村上 淳一 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (80009795)
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Keywords | 帝国法 / 属州法 / 碑文 / 皇帝権 / ローマ市 / 検断 / 神判 / 史料論 |
Research Abstract |
今年度は最終年度であり、各研究班毎に研究成果を集約するとともに、班横断的な諸課題についても全体で討議を行った。特に議論が深められた点を例示すれば、古代については、ローマ帝国における帝国法と属州法の関係をめぐって、ローマ法と東部のVolksrechtの関係を論じたL.Mitteisの古典的研究が詳細に検討されて、Volksrechtの中で更に差異を識別すべきことが指摘されるとともに、スペインで近年出土した碑文史料の分析から西部でも東部のVolksrechtに相当する法の存在を想定できる可能性が示唆された。中世については、9,10世紀の皇帝権とオットー1世の国家の性格が、証書中の支配者タイトルなどを手がかりに詳しく考察され、イタリアの支配者が皇帝として通用するためには教皇との協調とローマ市の貴族の支持ないし中立が必要であったこと、オットー以前のイタリアやアルプス以北出身の皇帝たちとオットーとの間には支配者としての性格に強い連続性が存在したこと、オットーの場合アルプス以北とイタリアをあわせた全体が一つの単位でありこれがオットーの皇帝権の政治的枠組みとなっていたことなどが確認された。また日本については、鎌倉期における一次的検断システム(地頭などの地域における「職」保持者が担う)と二次的検断システム(守護および幕府が担う)の重層構造、室町期における後者の一般化という裁判システムの展開が確認され、その上でそこでの神判の意味と機能に関して検討と議論がなされた。 横断的な課題としては、トゥールのグレゴリウスの『歴史十書』やザクセンシュピーゲルを直接の題材として、史料解釈手法の深化が図られ、史料論の精緻化という今後の課題が展望された。
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Research Products
(28 results)
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[Publications] 田口 正樹: "(翻訳)ペーター・モーラフ著『ヨーロッパ中世史研究におけるモヌメンタ・ゲルマニアエ・ヒストリカの役割--過去と現在』"東京大学史料編纂所(編)『歴史学と史料研究』(山川出版社). 21-48 (2003)
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[Publications] 田口 正樹: "(書評)三佐川亮宏著『"叙任権闘争"とregnum Teutonicum--"ドイツ"概念の政治的・歴史的地平--(上)(下)』"法制史研究. 53号(発表予定). (2004)
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[Publications] 林 信夫: "『学説彙纂Digesta』第二三巻第三章第七五法文をめぐって--嫁資dos帰属問題の予備的考察(発表予定)"法政研究. 70巻4号. (2004)
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[Publications] 林 信夫: "為す債務と「無名契約」"法学論叢. 154巻4・5・6号(発表予定). (2004)
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[Publications] SATO, Shoichi: "A propos du plaid judiciaire pour la restitution du patrimoine ecclesiastique de Narbonne en 782"Melanges offertes pour Prof. Shin-ichi ICHIKAWA. 117-132 (2003)
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[Publications] SATO, Shoichi: "Texte de silence ou silence du texte : essai de deconstruction des Historiarum Libri Decem de Gregoire de Tours"Journal of Studies for the Integrated Text Science. Vol.1,No.1. 13-29 (2003)
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[Publications] NISHIKAWA, Yoichi: "Feudalismus und Staat-Zur Entstehung der Systematik der japanischen Rechtsgeschichte"Zeitschrift fur Neuere Rechtsgeschichte. 25.Jg.Nr.1/2. 19-38 (2003)
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[Publications] 西川 洋一: "東京とベルリンにおけるルートヴィヒ・リース"東京大学史料編纂所(編)歴史学と史料研究(山川出版社). 202-233 (2003)
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[Publications] 西川 洋一: "(書評)「Gerd Althoff, Spielregeln der Politik im Mittelalter : Kommunikation in Frieden und Fehde」"国家学会雑誌. 116巻9・10号. 157-161 (2003)
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[Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲル・レーン法邦訳(11)--アウクトル・ヴェートゥスとの比較・対照をも兼ねて--"北大法学論集. 54巻3号. 874-912 (2003)
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[Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲル・レーン法邦訳(12)--アウクトル・ヴェートゥスとの比較・対照をも兼ねて--"北大法学論集. 54巻4号. 1309-1350 (2003)
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[Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲル・レーン法邦訳(13)--アウクトル・ヴェートゥスとの比較・対照をも兼ねて--"北大法学論集. 54巻5号. 1738-1774 (2003)
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[Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲル・レーン法邦訳(14)--アウクトル・ヴェートゥスとの比較・対照をも兼ねて--"北大法学論集. 54巻6号. 2318-2356 (2004)
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[Publications] OGAWA, Kozo: "Ist die Inquisition Strafverfahren? Zum Inquisitionsverfahren in der Blutezeit der Dekretalistik"Mario ASCHERI u a. (hrsg.),》Ins Wasser geworfen und Ozeane durchquert《, Festschrift fur Knut Wolfgang Norr, Bohlau. 653-663 (2003)
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[Publications] 小川 浩三: "ローマ法・比較法・民法解釈学批判--E.ラーベルの場合"村上淳一(編)法律家の歴史的素養(東京大学出版会). 75-89 (2003)
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[Publications] 小川 浩三: "(翻訳)クヌート・ヴォルフガング・ネル「中世教会における法発展の担い手--第一部:グラチアーヌスまでの時代」"桐蔭法学. 10巻2号. 49-69 (2003)
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[Publications] 小川 浩三: "(書評)源河達史著「グラーティアーヌス教令集の帰責の問題について」(法学協会雑誌一一九巻二、五、七、八号)(発表予定)"法制史研究. 53号(発表予定). (2004)
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[Publications] 神寶 秀夫: "新たな近世国制史の構築に向けて"創文. 460号. 6-10 (2003)
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[Publications] 和田 卓朗: "法史学の視角から見た糾問原理の意味と評価--翻訳と解説--(1)"法学雑誌(大阪市立大学). 50巻1号. 136-206 (2003)
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[Publications] 和田 卓朗: "法史学の視角から見た糾問原理の意味と評価--翻訳と解説-(2)"法学雑誌(大阪市立大学). 50巻2号. 185-210 (2003)
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[Publications] 村上 淳一: "サヴィニーの民事訴訟"日本学士院紀要. 58巻1号. 35-47 (2003)
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[Publications] MURAKAMI, Jun'ichi: "Justiz und Juristenausbildung in Japan"Mario ASCHERI u a. (hrsg.),》Ins Wasser geworfen und Ozeane durchquert《, Festschrift fur Knut Wolfgang Norr, Bohlau. 633-648 (2003)
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[Publications] 石井 紫郎: "ウケヒに関する覚書"国家学会雑誌. 117巻1・2号. 1-36 (2004)
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[Publications] 新田 一郎: "荘園法の構造"永原慶二ほか(編)『講座日本荘園史3 荘園の構造』(吉川弘文館). 141-182 (2003)
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[Publications] 新田 一郎: "(書評)蔵持重裕著『中世 村の歴史語り--湖国「共和国」の形成史』(吉川弘文館)"日本歴史. 663号. 107-110 (2003)
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[Publications] 佐藤 彰一: "歴史書を読む--『歴史十書』のテクスト科学--"山川出版社. 180 (2004)
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[Publications] 佐藤 彰一: "中世初期フランス地域史の研究"岩波書店(発表予定). 380 (2004)
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[Publications] 村上 淳一(編著): "法律家の歴史的素養"東京大学出版会. 191 (2003)