2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13430006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 保興 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (10104605)
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Keywords | アジア通貨危機 / IMFコンディショナリティ / 不良債権 / 制度改革 / 地方分権化 / 制度論 |
Research Abstract |
本年度は、共同研究者がインドネシアの大蔵省へJICAの専門家としてIMFとの交渉に関する業務に従事していることから、インドネシアの調査に重点を置くことにした。本研究の目的は、通貨危機によって4カ国の経済がどの程度深刻な影響を受けたか、その悪影響はこれからも継続するのか、それとも早期に立ち直って、前と同じような高度成長軌道へ戻れるのかを明らかにすることである。そのためには、直接に関係する金融部門のダメージの大きさ、不良債権の割合、企業の債務の大きさだけでなく、マクロ経済状況や危機後の制度改革の効果からアメリカ・ヨーロッパ・日本・中国など外部の経済状況まで考慮に入れなければならない。もちろん、主要な研究対象は4カ国の内部の経済状況に絞られるけれども。12月末のインドネシア調査では、危機後にIMFの強い要請で採用された地方分権化政策が地方政府にどのようなインパクトを及ぼしているのか、具体的に西カリマンタンの県庁やその周辺の経済状況を調べた。その際、農業活動が主要な産業であることから、農業を専門にする同僚にも参加してもらった。また、インドネシアの工業成長の鍵を握ると思われるバタム島も短時間であるが訪問した。シンガポールと船で4時間ほどしか離れていないこの島では、経済特別区の恩典を受けて大きな工業団地が展開中である。インドネシアの成長率が急速に回復しうるかどうかは、この島の活気がどの程度かにも依存してくるだろう。あいにく、週末ということで責任者に会って詳細な話を聞くことはできなかったが、工業団地を訪問して諸施設を見て回ることはできた。次回は、責任者へのインタビューも含めて、ビンタン島と一緒に調査する必要がある。インドネシアの経済が早急に回復すれば、ルピアも上昇して企業債務も軽減が期待される。2月下旬には、韓国を訪問予定である。中央銀行やソウル大学の専門家に、通貨危機後に採用された制度改革が韓国のほかの諸制度とうまく融合し有効に機能しているかどうかを議論することが目的である。最近発売された大容量のパソコンを購入したので、収集したデータや制度改革の具体例を徐々にインプットして、3カ年計画にふさわしい研究にする予定である。
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