Research Abstract |
公的ネットワーク産業では,近年,その供給する公共的サービス水準の貧困さ,供給システムの非効率性が大きな問題となっており,様々な技術発達,社会情勢の変化による,競合サービスの成長,新たなニーズの成長といった事態をも受けて,伝統的な供給体制の改革が喫緊の課題となる状況になっている。これに対して様々な施策が各国,各分野で実施されているが,その歴史的蓄積も少なく,公的ネットワーク産業としての包括的かつ横断的な研究は皆無といってよい。そこで,重要な改革群の成果を整理分析することで,今後の研究・議論のための土台を提供することが本研究の狙いである。 研究プロジェクト初年度である本年は,主に研究プロジェクトメンバー各自がそれぞれ独立に,港湾・物流,地域公共交通,航空,郵便,鉄道といった代表的分野における各種の施策,先行研究,さらに今後統合的な分析を行う上で不可欠になると思われるデータの収集・整理に努めた。 日本にとじない世界レベルの研究を意識するわれわれにとって,海外研究者との直接交流は不可欠の活動である。実際,ノルウェー,モルデで6月末に開催された,第7回International Conference of Privatization and Deregulation in Passenger Transportationで正司が,7月下旬にソウル(韓国)で開催された第8回世界交通学会(World Conference on Transportation Research)で水谷および正司がそれぞれの研究について報告し,世界の研究者・担当者から有意義なコメントをもらうことに努めた。と同時に,各国の状況について最新の情報を取得した。当初予定した海外研究者を招聘しての国際ワークショップは当該研究者の体調および米国での同時多発テロの影響で断念を余儀なくされたが,それに代わって,村上が本分野,なかでも航空分野の研究の世界的メッカであるブリティッシュコロンビア大学にこの冬出張し,多様かつ綿密な意見交換と海外研究者との共同研究を進めることができたのは,次年度以降の活動にとって,大きな意義があったと考えている。
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