Research Abstract |
公的ネットワーク産業では,その供給する公共的サービス水準の貧困さ,供給システムの非効率性が大きな問題となっている。伝統的な供給体制の改革が喫緊の課題となる状況になっているなか,これに対して様々な施策が各国,各分野で実施されているが,その歴史的蓄積も少なく,公的ネットワーク産業としての包括的かつ横断的な研究は皆無といってよい。そこで,重要な改革群の成果を整理分析することで,今後の研究・議論のための土台を提供することが本研究の狙いである。 研究プロジェクト第2年度である本年は,研究プロジェクトメンバー各自が,地域公共交通,航空,郵便,鉄道,物流といった分野におけるそれぞれの研究をさらに進めるとともに,相互にその結果を持ち寄り報告しあうことで,研究のさらなる発展を図る作業を行った。そのなかで公的ネットワーク産業の民間供給手法に関する統合的研究フレームワークをめぐる包括的議論にも着手し,いわば方針・原理原則を定める戦略レベルと日々の事業活動を包括するいわば戦術レベルを区分することの重要性,規制緩和後の制度設計の議論で,戦略レベルの名のもとで,どちらかといえば戦術的な内容に近いことに目が向きがちである性向があることがみられる点は,次年度の研究課題を明らかにした点でも興味深い。 日本にとじない研究を意識するわれわれにとって,海外研究者との直接交流は不可欠の活動である。そのなかで村上が本分野,なかでも航空分野の研究の世界的メッカであるブリティッシュコロンビア大学に,昨年に引き続きこの冬出張し,多様かつ綿密な意見交換と海外研究者との共同研究をさらに進めることができたのは,大きな意義があったことと考える。さらに,水谷は8月末欧州地域経済学学会にて現時点での研究成果について報告し,世界の研究者・担当者から有意義なコメントをもらうことができた。と同時に,参加メンバーから各国の状況について最新の情報を取得するのに努めた。さらに,正司は別のファンドによりオランダに出張する機会を得たが,その際,欧州議会による鉄道政策に関する最新情報を収集できたこと,さらに交通政策研究者と深い.レベルで議論できたことは本研究にとっても有意義である。
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