Research Abstract |
公的ネットワーク産業では,その供給する公共的サービス水準の貧困さ,供給システムの非効率性が大きな問題となっている。伝統的な供給体制の改革が喫緊の課題となる状況になっているなか,これに対して様々な施策が各国,各分野で実施されているが,その歴史的蓄積も少なく,公的ネットワーク産業としての包括的かつ横断的な研究は皆無といってよい。そこで,重要な改革群の成果を整理分析することで,今後の研究・議論のための土台を提供することが本研究の狙いであった。 3年間にわたる研究プロジェクトの過程を経て,これまでわが国では国際的な比較可能性を十分に意識した研究蓄積が乏しかった,地域公共交通,航空,郵便,鉄道,物流といった分野についての解析が進んだことは,一つの大きな成果であったといえよう。これらの成果を統合することで,公的ネットワーク産業の民間供給手法に関する統合的研究フレームワークをめぐる包括的議論を進めることができたことも,今ひとつの大きな成果である。そのなかで,いわば方針・原理原則を定める戦略レベルと日々の事業活動を包括するいわば戦術レベルを区分することの重要性,規制緩和後の制度設計の議論で,戦略レベルの名のもとで,どちらかといえば戦術的な内容に近いことに目が向きがちである性向があることがみられることを明らかにしたこと,この点を克服する制度設計と,原理原則自体に関する一層の研究の必要性とその方向性を明らかにできたことは,学会のみならず政策的にも意義深いと考える。 日本にとじない研究を指向するわれわれにとって,たとえば村上が中心となって,本分野,なかでも航空分野の研究の世界的メッカであるブリティッシュコロンビア大学と深い研究交流の絆を気づけたことも本プロジェクトの成果の一例である。本年6月からは一昨年神戸にもきたChang教授が同大学交通研究所所長になること,同大学出身で現在シンガポール大学の教授が,この夏から半年の予定で神戸大学に留学する予定であることなど,今後,さらに国際的な研究を進める絶好のタイミングとなっている。 われわれとしても,本研究プロジェクトの自体の年度は終了ではあるが,これら成果を土台に,平成16年度以降も研究をさらに押し進める予定である。
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