Research Abstract |
この研究課題のもとで筆者はマサチューセッツ工科大学のVictor G.Kac教授と共同研究を行い,アフィン・スーパー・リー環とスーパー・コンフォーマル代数(SCA)の構造と表現の研究を行った。そして,スーパー・リー環のW代数の理論に顕著な成果を得た。その概要は次の通りである。 1.gを有限次元単純リー環とし,fをnilpotent元,xをmono-semisimple元とするとき,Drinfeld-Sokolov reductionの量子化法によってW代数W(g,x,f)を構成する方法を与えた。 2.特にfが最高ルートthetaのルート・ベクトルのとき,すなわちf=e_{-theta}のW代数のを詳しく調べた。 3.この方法により,これまで知られているスーパー・コンフォーマル代数は,すべてW代数として構成される。具体的に例をあげると,W(sl(2),e_{-theta})はVirasoro代数,W(osp(1,2),e_{-theta})はNeveu-Schwarz代数,W(sl(2,1),e_{-theta})はN=2 SCA,W(osp(3,2),e_{-theta})はN=3 SCA,W(sl(2,2),e_{-theta})はN=4SCA,W(D(2,1;a)はbig N=4 SCA,W(sl(3),e_{-theta})はBershadsky-Polyakov代数,W(osp(m,2),e_{-theta})はBershadsky-Knizhnik代数,W(sl(3),principal nilpotent element)はZamolodchikovのW_3代数などである。我々の理論は,これらのすべてを含み,スーパー・コンフォーマル代数を統一的に扱う理論である。 4.この理論で重要な道具は"頂点代数"である。しかし,頂点代数ではNeveu-Schwarz型の粒子しか扱うことが出来ない。Ramond型の粒子を含むスーパー・コンフォーマル代数をも含めて,"すべての"スーパーコンフォーマル代数を得るために,この方法を更にgの自己同型sigmaでtwistされたtwisted頂点代数に拡張した。この際にgの自己同型sigmaでfとxを固定するものの分類が必要になる。上の例にあげた重要なスーパー・コンフォーマル代数について,gの自己同型sigmaの分類を行い,可能なtwistをすべて求めた。 5.f=e{-theta}のときに,Neveu-Schwarz型とRamond型に限らず,それらを含めて,より一般のtwistedW代数W(g,e_{-theta},x,sigma)について,その構造と表現を研究し,行列式公式,指標公式,自由場表現を求めた。行列式公式はVerma moduleの特異ウェイトについての情報を含んでいて,表現論において最も重要なものである。(主として物理学者による)これまでの研究で得られていた行列式公式は,N=2,3,4 SCAについて,最初のいくつかを具体的に計算して,そのデータから予想されたもののみであったが,我々の研究によって初めて厳密にかつ(すべての場合を含んで)統一的に証明され,かつ簡明な形の式で表示された。
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