2002 Fiscal Year Annual Research Report
擬一次元ハロゲン架橋金属錯体の電子相の競合と価数状態の研究
Project/Area Number |
13440093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 新一 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20291403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸本 一弘 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (50293668)
伊東 裕 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10260374)
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Keywords | ハロゲン架橋金属錯体 / 電子相 / 価数状態 / 非線形励起 / 電子スピン共鳴 / 時間分解 / 光励起 |
Research Abstract |
擬一次元ハロゲン架橋金属錯体(MX系)は、スピン密度波(SDW)や電荷密度波(CDW)などの多様な電子相やソリトン、ポーラロン等の非線形素励起の生成する擬一次元物質である。我々は電子スピン共鳴(ESR)がMX系の磁性イオン(M^<3+>)の検出に優れた手法であることを示してきたが、これまでは定常的な測定に限られてきた。本研究の目的は、時間分解光励起ESRを整備し、MX系の素励起の検出や、競合する2つの電子相の光制御などを研究する新しい手法として開発、適用することである。 本年度は第一に光励起ESR(LESR)法を用いてCDW基底状態を持つMX系の素励起の研究を行った。Pd(chxn)_2Br_3では低温で光生成スピン種の検出に成功し、その温度応答時間は温度に依存して数分から数十分程度となった。そして励起強度度依存性や励起スペクトルの測定も行い、過渡応答特性の結果と合わせて解析を進めた結果、光生成種はソリトン励起が支配的であると解釈された。また[Pt(en)_2][Pt(en)_2X_2](ClO_4)_4(X=Cl, I)についてもLESRの励起スペクトルを得ることに成功し、それぞれソリトンやポーラロンの励起に帰属され、光誘起吸収などの結果と対応した。 本年度では第二に電子相が競合するMX混晶系Ni_<1-x>Pd_x(chxn)_2X_3やNi_<1-x>Co_x(chxn)_2X_3についてESR測定を行い、SDW相やCDW相の電子相の研究を進めた。この系に対してもLESR測定を行ったが、光励起信号強度が低く、定量的な議論はまだ出来ていない。また単結晶に電極を取り付けて圧力下での電気抵抗、熱電能測定を行い、キャリア特性も調べた。さらにMX系の発展系であるMMX系についてもESR測定を行い、交互電荷分極相におけるソリトン励起の検出に初めて成功した。以上の成果については論文等で発表した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Tanaka, et al.: "ESR detection of induced spin moments in halogen-bridged mixed-metal complexes Ni_<1-x>Pd_x(chxn)_2Br_3"Journal of the Physical Society of Japan. 71・5. 1370-1375 (2002)
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[Publications] M.Ymashita, et al.: "Tuning of electronic structures of quasi-one-dimensional bromo-bridged Ni(III) Complexes with strong electron-correlation by doping of Co (III) ions, [Ni_<1-x>Co_x(chxn)_2Br]Br_2"Inorganic Chemistry. 41・8. 1998-2000 (2002)
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[Publications] H.Tanaka, et al.: "Electron spin resonance studies of Co(tbp)・C_<60>single crystal"Journal of Physics : Condensed Matter. 14・15. 3993-4000 (2002)
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[Publications] H.Tanaka, et al.: "ESR studies of quasi-one-dimensional halogen-bridged mixed-metal complexes"ESR in the 21^<th> Century : Basics and Applications to Material, Life and Earth Sciences. 79-84 (2002)
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[Publications] H.Ito, et al.: "Electrical Conduction of Halogen-Bridged Metal Complexes Ni_<1-x>Pd_x(chxn)_2Br_3"Molecular Crystals and Liquid Crystals. 379. 285-290 (2002)
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[Publications] H.Tanaka, et al.: "LESR studies of long-lived photo-generated spins in MX-chain compounds"Synthetic Metals. (in press). (2003)