2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13440094
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
有賀 哲也 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70184299)
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Keywords | 金属表面 / 電荷密度波 / 角度分解光電子分光 / 表面X線回折 |
Research Abstract |
本研究の目的は、本申請者らが最近発見した新しい低次元金属物質であるCu(001)-In系等について、角度分解光電子分光によりそのフェルミ準位近傍の電子状態を検討し、他の手法による物性測定の結果とも総合することにより、これらの物質における低次元系に特有な物性を解明することにある。 本年度は、Cu(001)-Inにおけるc(4x4)相とp(2x2)相との間の相転移の機構について,角度分解光電子分光と表面X線回折法による研究を行った。角度分解光電子分光では,c(4x4)表面ブリルアン・ゾーン境界における電荷密度波ギャップの温度依存性の測定を行った。実験配置をうまく選ぶことにより,lower bandだけではなくupper bandの観測に成功し,その結果,ギャップの絶対値を決めることができた。結巣は,弱結合電荷密度波相転移で期待される挙動と良く一致した。このことは,この相転移において電子系のエントロピー,エンタルピーが重要な寄与を果たしていることを示している。一方,表面X線回折では,c(4x4)超格子回折のプロファイルの温度依存性を測定した。プロファイルの解析から得られた長距離秩序パラメータ,短距離秩序パラメータ(感受率),相関長の三つのパラメータについて臨界指数を求めたところ,2次元Isingクラスで期待される値と一致した。このことは,この相転移が,格子系のエントロピーによる秩序-無秩序転移の性格を持つことを示している。これらの一見矛盾するように見える二つの結果は,金属表面というこの系の次元性を反映していると考えられる。すなわち,表面共鳴バンドが形成する電荷密度波ギャップは大きく,強束縛的な電荷密度波基底状態を導く。一方,基板電子系からupper bandへの電子遷移はずっと小さなエネルギーに対応し,低温でも大きな電子エントロピーを与え,相転移においては弱結合的な振る舞いを見せる。このように,二重的な性格を有する電荷密度波相転移は,表面系では広く一般に見られると期待される。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] S.Hatta, H.Okuyama, M.Nishijima, T.Aruga: "Evolution of Fermi surfaces on In/Cu(001) and its relevance to phase transitions"Appl.Surf.Sci.. (印刷中).
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[Publications] T.Nakagawa, H.Okuyama, M.Nishijima, T.Aruga 他4名: "Dual nature of a charge-density-wave transition in In/Cu(001)"Phys.Rev.lett.. 67. 241401-1-241401-4 (2003)