Research Abstract |
本研究は,能動型リモートセンシングと受動型リモートセンシングを組み合わせた地上からの複合観測により,氷晶雲の雲物理特性と放射特性との関係を解明して,氷畠雲の放射エネルギー収支に及ぼす効果を定量化することを目的とする.あわせて,雲レーダやライダ等の能動型センサによる氷晶雲の観測法を開発し,将来計画されている能動型センサを搭載した人工衛星による雲観測の有効性の検証に寄与する. 今年度は,開発された氷晶を含む雲に対する放射伝達計算法や複合センサによる観測データの解析手法を実際の観測事例に適用することに重点をおいた.浅野は,太陽放射および赤外放射の伝達計算スキームを用いて,中緯度氷晶雲の放射ゾンデ観測データの再現実験を行い,それらの雲の構造と放射特性との関係を明らかにし,その結果を論文発表した.また,受動型・能動型の複合センサによる観測から、雲粒と氷粒子を含む混合層雲の微物理特性を導出する手法を開発するための放射伝達シミュレーション計算を行い,2周波(35GHz,95GHz)の雲レーダを用いることにより,氷晶の微物理特性を推定することが可能であることを示した.さらに,3次元不均質大気の放射伝達方程式の準解析的解法を開発し,不均質な雲構造と放射特性との関係を適正に記述するための数値実験を行なった. 岡本は,雲レーダとライダによる複合観測データから氷晶雲,水雲,霧雨の微物理特性を導出するアルゴリズムを開発し,成果の一部を論文発表した.また観測船「みらい」に搭載された各種センサによる観測データの解析を終え,結果をまとめた.一例として,ドップラー機能がある雲レーダを用いると,雲粒子の落下速度の計測が可能になり,この落下速度とライダから求められる粒子半径との関係を導くことができる.この手法を適応して,氷雲,水雲,霧雨の場合に分けて解析した.その結果,氷粒子の落下速度は1ms^<-1>以下で,粒子半径が大きくなってもあまり大きくはならないこと,降水を伴わない水雲は,弱い上昇速度を示すがほぼ0ms^<-1>であること,霧雨は,氷粒子に比較して同じ粒子半径でも2倍程度大きい落下速度を示すこと,などが判明した. 本研究で得られた成果は,氷晶を含む雲の観測法の改善や気侯モデル等における雲・放射のスキームの改良に役立つものと期待される.
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