Research Abstract |
今年度は昨年度に引き続き,新たに4種類のエンスタタイトエコンドライト,8種類のH4コンドライト隕石Jilin,16種類の月表層コア試料に着目して分析を行った。各々について化学的前処理を施し,Sm,Gdを元素分離し,表面電離型質量分析計による精密同位体測定を行った。Sm,Gdの同位体変動から,宇宙線照射による中性子フルエンスならびに熱中性子エネルギーに関するパラメータについて見積もった。特にエンスタタイトエコンドライト隕石については,Sm,Gd同位体変動に加えて,三浦によるHe,Ne,Ar,Kr,Xeの希ガス同位体分析,および西泉による^<10>Be,^<26>Al,^<41>Ca等の短寿命宇宙線生成核種存在度から宇宙線照射履歴に関する統一的な解釈を試みた。 エンスタタイトエコンドライトの宇宙線照射環境は二つに大別されることがわかった。Bishopville, Cumberland Falls, ALH78113,PesyanoeについてはSm,Gdから求められる中性子フルエンス量が非常に高く,希ガスから求められる宇宙線照射年代との間には全く相関が見られない。さらに,短寿命宇宙線生成核種についても中性子フルエンスとの間に相関は見られず,Sm,Gdがもたらす同位体データが隕石母天体上における初期照射の履歴(2π照射)を保存していることが示唆される。これに対し,Shallowater, Pena Blanca Spring, Khor Temiki, Norton County, Mayo Belwaについては,その中性子フルエンス量を宇宙線照射年代から説明することが可能であり,^<41>Ca生成量とも整合性があることから,母天体から破砕して.ある程度の大きさになった隕石各種が宇宙空間で等方的な照射(4π照射)を受けたことによるものと思わる。
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