2002 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ学習記憶中枢の形成と制御遺伝子網の分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
13440224
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Research Institution | TSUKUBA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
古久保 克男 (徳永 克男) 筑波大学, 生物科学系, 助教授 (00272154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸尾 文昭 筑波大学, 生物科学系, 助手 (30199921)
中川 リリア 筑波大学, 生物科学系, 講師 (80300888)
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Keywords | 脳 / 発生 / 遺伝子 / ショウジョウバエ / 学習 / 記憶 |
Research Abstract |
脳の高次構造の形成と可塑性を制御する分子機構を研究するにあたり、ショウジョウバエの脳はすぐれた研究材料を提供している。中でも、ショウジョウバエキノコ体は、学習記憶をはじめ多様な高次脳機能の中枢であるが、その初期発生様式と制御遺伝子については、神経構造の複雑さに阻まれ断片的知見しかない。我々は、これまでに胚発生過程のキノコ体前駆細胞で、ショウジョウバエPax6相同遺伝子であるeyelessとtwin of eyeless、および複眼形成遺伝子dachshundが高レベルで発現しており、eyelessとdachshundの変異体ではキノコ体の形成が著しく阻害されることを報告してきた(Kurusu et al.,PNAS,2000)。本年度は、これらの研究結果をもとに、ショウジョウバエ脳形成過程におけるtwin of eyeless遺伝子の機能をさらに明らかにした。 脊椎動物では1つのPax6遺伝子から複数の転写産物が産生され、目と中枢神経の形成を支配しているが、ショウジョウバエではeyeless遺伝子とtwin of eyelessの2つのPax6遺伝子が存在する。複眼形成ではこれらの2つの遺伝子が部分的に重複する機能を持もち、eyeless遺伝子の発現はtwin of eyelessにより誘導されることが知られている。これら2つのPax6遺伝子の脳形成過程における相互制御とtwin of eyeless遺伝子の機能をRNAi解析により検討した。その結果、twin of eyeless遺伝子の不活性化により脳半球の形成異常が誘導されことが示された。しかしながら、キノコ体におけるeyeless遺伝子の発現は、twin of eyeless遺伝子のRNAi抑制により変化しなかった。さらに、新しく同定されたtwin of eyeless変異体 toy[headless]を使用することにより、twin of eyelessは脳の幅広い領域決定に関与するものの、キノコ体の神経構造の形成には要求されないことが明かとなった。eyelessとtwin of eyelessは互いに類似したDNA結合特性を持つが、我々の結果は2つのタンパクが脳発生過程ではっきりと異なる機能を持つことを示している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Kurusu, M., Awasaki, T., Masuda-Nakagawa, L.M., Kawauchi, H., Ito, K., Furukubo-Tokunaga, K.: "Embryonic and Larval Development of the Drosophila Mushroom Bodies : Concentric Layer Subdivisions and the role of fasciclin II"Development. 129. 409-419 (2002)
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[Publications] Furukubo-Tokunaga, K.: "Homeobox and nervous system development. in Encyclopedia of Neuroscience"Elsevier, New York, in press. (印刷中). (2002)
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[Publications] 安達 在嗣, 古久保-徳永 克男: "Otx遺伝子の機能的互換性が示す脳の起源"比較生理生化学. 19(2). 146-152 (2002)
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[Publications] 古久保-徳永 克男: "ホメオボックス・ストーリー:形作りの遺伝子と発生・進化"ワルター,J.ゲーリング著、朝島誠監修、共訳、東京大学出版会. 313 (2002)