2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13440231
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺島 一郎 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40211388)
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Keywords | 樹木 / 光合成 / 水分生理 / 樹形 / 転流 / シンクとソース / 細胞壁 / バイオメカニクス |
Research Abstract |
1. 常緑広葉樹の葉の構築・維持に関する研究 常緑広葉樹の葉の発生における炭素収支を明らかにするとともに、炭素収支と葉の解剖学的特性との関連を検討した。材料にはアラカシを用いた。シンクからソースへ変化する葉齢は、葉面積の展開が終了してからおよそ10日後であった。また、葉緑体は葉面積展開終了後に発達するにもかかわらず、成熟葉に含まれる窒素のおよそ80%は貯蔵物質に由来していた。以上の結果より、常緑広葉樹の葉において、貯蔵物質は葉肉組織の分裂と伸長、葉緑体の発達に貢献し、成長している葉自身の光合成産物は主に細胞壁の肥厚に貢献していることが示唆された。 2. 葉の水分生理特性を示す体積弾性率と細胞壁の諸特性との関係 葉の含水量低下に伴う圧ポテンシャルの低下の割合(体積弾性率)は細胞壁の力学的性質によって決まる。この体積弾性率の乾燥環境における変化については意見が分かれている。やわらかい細胞壁は含水量の低下に対し圧ポテンシャルの維持に貢献するから適応的であるという意見がある一方で、堅い細胞壁をもつほうが体積のわずかな減少で吸水能力を高めて細胞体積の維持に貢献するから適応的であるとする意見もある。コナラとミズナラの二年生苗を用いて、乾燥が体積弾性率におよぼす影響を検討したところ、乾燥によって細胞壁は柔らかくなった。細胞壁の厚さを測定したが、厚さの変化はみられなかった。 3. 樹形の力学的バランスについて 樹木固体では枝や幹が傾きをもつために、枝の断面には主に垂直荷重と曲げモーメント(水平荷重×てこの長さ)による合成ストレスが作用している。解析の結果、ウリハダカエデでは、ストレスを抑えるために枝を垂らすことなく、破壊に対する安全率の低下を犠牲にしても葉の位置を高く維持しようとする樹形を持っていた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Miyazawa, S-I., Terashima, I.: "Slow chloroplast development in the evergreen broad-leaved free species : relationship between leaf anatomical characteristics and photosynthetic rate during leaf development"Plant, Cell and Environment. 24. 279-291 (2001)
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[Publications] Saito, T., Tanaka, T., Tanabe, H., Matsumoto, Y.: "Species variation in the transpiration rate is closely related to leaf cell capacity for turg or maintenance in saplings of eight common deciduous broad-leaved tree species of cool temperate forests"Tree Physiology. (印刷中). (2002)
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[Publications] Terashima, I., Kimura, K., Noguchi, K., Sone, K.: "Defferential analyses of tree development : Roles of Light environment. In Diversity and Interaction in a Temperate Forest Community"Springer. 319 (2002)