2002 Fiscal Year Annual Research Report
振動するモーター蛋白質ダイニンの滑り活性とその制御機構の解明
Project/Area Number |
13440249
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真行寺 千佳子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80125997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 裕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50323499)
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Keywords | ダイニン / 滑り運動 / ATPase活性 / 振動 / 鞭毛運動 / 微小管 / ウニ精子 |
Research Abstract |
鞭毛運動の基本は,周期的屈曲運動(振動)である.この周期的屈曲は,鞭毛軸糸内のダブレット微小管間に起こる滑り運動を基本とし,滑り運動はダブレット上に並ぶモーター蛋白質ダイニンによって引き起こされる.本研究では,鞭毛の振動の基本メカニズムを解明するために,1)ダイニン1分子における化学-力学情報のカップリング,2)軸糸内の9本のダブレット上のダイニン間における化学-力学情報のカップリング,3)これらの化学-力学情報のカップリングの,中心小管/ラディアルスポークを介した制御,を明らかにすることを目指しで実験を行った.1)については,ダブレット上のダイニンのATP結合状態を観察することに成功したが,蛍光ATPはダイニンにより加水分解されるにも関わらずダイニンの滑り運動を誘導しないことが確かめられた.したがって,滑り活性とATPase活性を対応させながら解析しようという試みは現段階では困難であることが判明した.しかし,運動にカップルしないATPの加水分解がどのような意味を持つかは今後の課題である.2)について,我々はダイニンのモータードメインのみを持つ断片が正常なダイニンの活性を増大させることを見い出した.このことは,微小管を介したダイニン間の協調的制御の存在を示唆する.3)については,カルシウムによるダイニン活性の制御が中心小管/ラディアルスポークを介した機構によることを示し,振動の基本となるダイニン活性の切り替えの機構についてモデルを提唱した.さらに,2)の結果に基づいて新しい実験系の検討を進めたが,実現には至らなかった.以上の結果の一部についてはすでに学術雑誌に公表した.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Imai: "Effects of trypsin-digestedouter-arm dynein fragments on the velocity of microtubule sliding in elastase-digestedflagellar axonemes"Cell Struct. Funct.. 28. 71-86 (2003)
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[Publications] I.Nakano: "Central-pair-linkedregulation of microtubule sliding by calcium in flagellar axonemes"J. Cell Sci.. 116. 1627-1636 (2003)