2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13450034
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
百生 敦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (20322068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 一郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90323526)
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Keywords | 軟X線 / 干渉計 / シンクロトロン放射光 |
Research Abstract |
軟X線領城において、安定なMach-Zehnder型干渉計の構築を実現するために、前年度までの検討・設計を受けて、本年度では(1)光学素子配置のためのステージの製作、(2)シンクロトロン放射光(軟X線)を利用したX線ハーフミラーの性能確認、(3)干渉計としての組立法の検討、までを行った。各項目について、以下に内容を説明する。 (1)軟X線干渉計は4つの光学素子を使用する。それらを配置するためのステージを、最小移動距離0.3nmのリニアステージと最小回転角6.9nradのウィークリンクヒンジ構成の回転ステージを組み合わせて構築した。ともに圧電素子により駆動するもので、また、真空中で軟X線を扱わなくてはならないため、超高真空対応仕様になっている。その他の自由度に関しては、比較的要求される位置精度が緩く、機械的精度に頼って予め固定することとした。すなわち、上記2つの自由度の微調整により、軟X線を干渉させるのに必要な調整が可能になる設計とした。 (2)軟X線ハーフミラーとして、最終的に厚さ2.5nmのRu単層膜を採用した。ただし、支持膜として、厚さ約60nmのSiNがあるものである。この素子は、波長13nmの軟X線に対して、視斜角20度で使用したとき、反射波と透過波の強度がほぼ1:1となる設計となっている。実際に、シンクロトロン放射光(高エネルギー加速器研究機構)を用いて、反射率および透過率の波長依存性および視斜角依存性を測定し、設計性能を確認した。 (3)我々が使用を予定している軟X線の波長が、可視光より一桁半短いこと、軟X線源の干渉性が必ずしも高くないこと、および、真空環境を想定せねばならないこと、を考慮すると、干渉光学系の配置は決して容易ではない。そこで、軟X線を照射する前の予傭調整が重要な意味を持ってくる。我々は可視光を干渉させそのvisibilityを測定することにより、最適位置近くまで事前調整を行うための手順を設定し、検証した。最適条件は光の波長に依存しないので、これにより軟X線の干渉が観察できる条件内に収めることができる。 これで軟X線の干渉を観察するための実験準備が整ったが、残念ながらシンクロトロン放射光を利用するためのマシンタイムとの整合が悪く、本年度内で実験を実施するに至らなかった。しかし、近く放射光利用のマシンタイムが与えられるので、早速評価実験を開始させる予定である。実際に軟X線の干渉を観察することができれば、軟X線フーリエ分光への応用を目指し、まず光路長可変の光学系への改良に着手したい。軟X線フーリエ分光の目論みは従来を凌ぐ高いエネルギー分解能にあり、軟X線原子分光などで新領域の開拓が期待される。
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