Research Abstract |
本研究は,当初,誘導電動機(IM)による電気自動車(燃料電池自動車,ハイブリッド電気自動車を含むEV)駆動方式の確立を目標とし,直流電源電圧の大幅な変動に対しても広い速度範囲にわたって,指定されたトルク・速度の目標値に制御可能な速度センサレスベクトル制御IMの常時最大効率制御法とそのシステム,電気2重層キャパシタの電源補完方式,および電池高性能充電回路と駆動用変換回路を兼用する多機能コンバータ方式を開発し,さらに1台のインバータで2台の並列接続誘導電動機を高性能に駆動制御する方式を開発して,シミュレーション実験,実験装置による実験で確認することを目的としていた。 本年度は,本研究の最終年度であり,前年度の研究成果のEVの2つの前輪を直接独立に駆動するために並列に接続した2台のIMを1台のインバータで速度センサレスベクトル制御する方式に関してその制御特性や不平衡負荷トルクに対する本方式の基礎特性を明らかにした。本方式は通常の3レグインバータ駆動でベクトル制御する方式であり,不平衡負荷トルクに対して励磁電流を一定に保ち,トルク電流は循環電流として2つのIM間を流れる。この循環電流が不平衡トルクの大きさに対応して増大し,指定トルクを発生し,指定回転速度を維持する働きをすることが解明された。 この研究成果は,IEEE Industry Applications SocietyのTransactionsの2004年1,2月号に掲載するため印刷が進んでいる。 さらに,最大効率速度センサレスベクトル制御IMによるEV駆動推進システムにおける電池電源への高性能充電およびスタート,加速アシスト用電気2重層キャパシタからの充放電制御システムは,その基本制御方式をシミュレーション実験で確認し,現在実測装置の作成に取り掛かっており,その成果はIEEE Power Electronics Specialist Conference 2004に投稿中であり,学会での発表を行う予定である。このテーマは高性能AC-DCコンバータの研究に発展した。 また,1台の5レグインバータによる2台のIMの完全独立ベクトル制御に関する研究は,この1年間で多くの成果を達成し,前年度のPWM制御法の特許申請に引き続き,EPEなど国際学会や国内の学会で3件の発表を行った。主な研究成果は,新しく開発したPWM制御法の理論的根拠をシミュレーション実験で確認したこと,本方式のスイッチング回数低減に基づきパワーデバイスの損失低減を図ったこと,2台のIMの完全に独立なベクトル制御を達成できたこと,すなわち2つのIMに完全に独立な指令を与えても完全に追従することなどが確認された。 今後の課題は,実測装置を作製し,より詳細な特性を明らかにすると共にEV駆動に適した特性に改善することである。 以上,本年度は所期の目的を達成し,おおくの研究成果を公表できた。
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