2001 Fiscal Year Annual Research Report
環境変動による疲労損傷加速効果の実証と損傷回復処理
Project/Area Number |
13450262
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
南雲 道彦 早稲田大学, 理工学部, 教授 (40208062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正和 早稲田大学, 材料技術研究所, 教授 (10241936)
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Keywords | 水素脆性 / 疲労 / 高強度鋼 / 遅れ破壊 / 電子線回折 / 点欠陥 / 原子空孔 / 表面反応 |
Research Abstract |
(1)疲労損傷として点欠陥の蓄積を予想しているが、まず疲労サイクルの進行によって欠陥の生成状況を調べた。試料は二種類の高強度マルテンサイト鋼で、回転曲げ疲労を与えた。種々のサイクル数で試料を取り出し、これに水素を添加して欠陥にトラップさせ、その室温及び昇温放出特性を解析した。点欠陥が生成することは疲労材を200℃で焼きなましたときの水素吸蔵特性の減少することから確かめた。疲労繰り返し数の増加に伴なって、全水素吸蔵量ははじめはやや減少していくが、疲労寿命の約半分の繰り返し数から増加に転ずる。水素吸蔵量の変化は主に水素との結合が弱い欠陥密度の変化で、点欠陥に対応する量は最初やや減少するが、途中で増加に転じて破断直前まで増加を続ける。これらの結果から、疲労過程で転位配列の変化が起き、疲労の進行に伴なって点欠陥(空孔)の蓄積が起きてくると考えられる。 (2)疲労と水素との相互作用を調べるために、予疲労を与えた高強度マルテンサイト鋼の遅れ破壊試験を行い、破断寿命が減少すること、また予疲労後200℃の焼きなましを行うと遅れ破壊特性が回復し、点欠陥の蓄積により水素脆化感受性が増大することを立証した。 (3)水素添加電流密度を変化させながら行う低サイクル疲労試験機を作成した。電流密度変動周波数の増加に伴って破断が早期に起きることを確認し、荷重変動との重畳効果を調べている。 (4)環境の変動に対する材料の表面状態の変化を解析するために、「電子線回折解析装置」の導入した。表面に酸化膜を形成したGaAsを原子状水素雰囲気にさらすと、表面から酸化膜が離脱していく過程を観察出来た。蛍光スクリーンの輝度と装置の入力信号感度の問題で、解析には信号を数秒間連続的に積算する必要があるが、蛍光材の変更等により表面状態の動的変化の解析も検討する。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 遠藤岳晴, 南雲道彦, 井上靖秀: "水素脆化した低炭素鋼に見られる変形組織"材料とプロセス. 15. 579 (2002)
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[Publications] 志村弘樹, 茶谷隆, 南雲道彦, 林博昭: "マルテンサイト鋼の疲労における点欠陥の生成"材料とプロセス. 15. 572 (2002)
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[Publications] 南久雄, 渕上博邦, 南雲道彦: "マルテンサイト鋼の細粒化に伴う水素吸蔵と水素脆化特性"材料とプロセス. 14. 1311 (2001)
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[Publications] 内山重和, 近江沢猛, 南雲道彦: "塑性変形誘起欠陥の水素マイクロプリント法による観察"材料とプロセス. 14. 1299 (2001)
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[Publications] 南雲道彦(共著): "材料破壊の基礎から応用-信頼性の高い材料の開発・利用"日本金属学会. 8 (2002)