Research Abstract |
本研究では,情報処理機器の設置密度の高い情報作業環境の実態に即した,特にプリンタからの発塵粒子を対象とした新たなIAQ評価手法を提案することを目的としている。昨年度はインクジェットプリンタ(IP)の発塵特性に調べたが,本年度はさらにモノクロレーザープリンタ(MLP)およびカラーレーザープリンタ(CLP)を対象に加えた。同様の発塵量測定装置内にプリンタを入れて,発塵量,粒径分布および帯電量分布等を調べた。その結果,いずれのLPでも,印刷時,給紙時に関わらず,発塵粒子の平均径が35nm前後となった。発塵量も,印刷時では色にかかわらず2〜3×10^7個/枚であり,給紙時でも印刷時の1/3程度の発塵量があった。また,帯電量分布を測定するために電圧を印加した平行平板電極に発塵粒子を通したところ,ほとんど粒径分布が変化しないことから帯電していないことがわかった。一方,IPの発塵粒子は帯電していることから, LPの発塵機構はIPのそれと異なり機械的な要因に寄らないと言える。また,LPで給紙のみを行った時の紙の重量が約2wt%減少することから,粒子生成に紙中の水分が関与していると考えた。そこで,発塵粒子をディフュージョンドライヤ(DD)に通した時の個数濃度分布の変化を調べた。その結果IPおよびMLP(印刷時)の発塵粒子は,大粒径の粒子が選択的に減少し,30nm以下の粒子はほとんど減少しなかった。一方,給紙のみのMLPの発塵粒子は,DDに通すことで全粒径範囲にわたって減少しほとんど消失した。以上のことから,印刷時のMLPの発塵粒子は,30nm以下の不揮発性の核と水分から構成されていると考えられる。この不揮発性の核は,トナーを175℃に加熱したときに揮発する成分で最も多量に検出されたスチレンが主成分となっていると予想される。また,CLPでは,カラー印刷を行うとDDに通してもほとんど個数濃度分布に変化がなかった。これは,CLPからの発塵粒子が水分をほとんど含んでいないと言える。この違いは,トナーの添加剤に起因すると考えられる。このように,いずれのプリンタの発塵粒子も,不揮発性成分を含んでおり,室内空間に長時間安定して存在できることから,ナノサイズ粒子の評価基準を早急に策定する必要があることが示された。
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