2001 Fiscal Year Annual Research Report
多結晶金属材料の結晶粒レベルにおける破壊伝播機構の解明に関する研究
Project/Area Number |
13450407
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉成 仁志 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (20167737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 重裕 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90010892)
高橋 淳 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (10222085)
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Keywords | へい開破壊 / 結晶粒 / 結晶方位 / 集合組織 / シャルピー試験片 / 伝播シミュレーション |
Research Abstract |
本研究では、多結晶材である鋼材の壁開破壊について、その現象を表すには、二つの基本原理、すなわち、(1)結晶粒内の劈開面が割れること、(2)その条件が局所応力により定められることが本質的である、との前提に立ち、劈開破壊伝播モデルを提案した。1)まず、各結晶粒における結晶方位をランダムとして、二軸比を変えたときのき裂伝播は、二軸比のみからその傾向が決まることがわかった。この結果は実験結果によく対応している。すなわち、き裂先端応力場における最大応力の方向は軸比によってほぼ決定され、従って、初期き裂の角度に殆どよらないことが説明できた。2)次に、集合組織のき裂伝播をモデル化するために、結晶方位を±45度を中心とした正規分布として再現した。このとき集合の度合いが強いほど伝播径路の凹凸の度合いは大きくなり、一方、弱くなるほど、結晶方位がランダムなものと同じ傾向を示すということがわかった。また、実際に集合組織を有する鋼材を供試したシャルピー試験を行ってその破面と比較した結果、本モデルによるシミュレーションによって実験での伝播径路をほぼ再現することができた。3)さらに、現実の鋼材のき裂先端では、必ず降伏が起こるので、き裂先端応力場をShihのすべり線場理論による解に基づき再現した。このときのき裂進展は、弾性の場合と比べて凹凸が激しくなる。これは塑性域内の、二軸比から決まったき裂先端応力場のある方向に対する依存性が弾性と比べて緩やかになるためで、ミクロ的にいえば、同じ角度に達するまでに弾性とくらべて、多くの結晶粒を通過することとなり、これが全体の傾向としてき裂の凹凸を激しくしているといことである。これもシャルピー試験では、高温の結果が塑性域が大きいということに対応しており、本シミュレーションの結果もそれらの結果に対応していて、破面の温度依存性を塑性域の有無により再現できることを示した。
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