2002 Fiscal Year Annual Research Report
長距離移動性昆虫の生理的・遺伝的特性と地理的変異及び飛来源の解明
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13460023
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤條 純夫 佐賀大学, 農学部, 教授 (50011911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉賀 豊司 佐賀大学, 農学部, 助手 (00312231)
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Keywords | 長距離移動 / 梅雨前線 / 秋雨前線 / 台風 / 飛翔能力 / ハスモンヨトウ / 地理的変異 / トビイロウンカ / 生活史特性 |
Research Abstract |
本研究で対象とした昆虫は、ハスモンヨトウとトビイロウンカという海を越えた移動をすることが確実視されたり、そのように推察されている野菜・稲の大害虫である。本年度は、台湾、フィリピン、沖縄、佐賀で採集したハスモンヨトウを一定の条件下で飼育し、得られた成虫の飛翔活性およぴ配偶行動を比較し、そうした形質に採集地間でかなりの差異があり、台湾産のものは飛翔活性が高いのに対し、フィリピン産のものは極めて活性が低いこと、また、佐賀で採集した群でも、場所により飛翔活性が異なることを明らかにした。フェロモントラップを、石垣、沖縄、鹿児島、佐賀、壱岐、対馬、さらに国外では、韓国の済州島、中国3カ所にフェロモントラップを設置し、日毎の雄成虫の捕獲数を調査したところ、降雨前線が到来したいずれの調査地点でも突発的に増加した。そうした時期の日本からの後退流跡線解析では、下層ジェット気流は梅雨前線時では中国中東部から、秋雨前線時には中国北部、朝鮮半島から到来し、そうした地域でも風と同調した突発的な捕獲を認めた。また、台風が調査地点に200km以内に接近した場合、いずれも捕獲数が突発的に増えることも確認した。こうした結果から、ハスモンヨトウでは、日本で越冬したものに由来して各地の発生がもたらされるよりも、海外から飛来してくるものに大きく由来するものと結論した。 トビイロウンカでは、広範囲の生息密度で特定の体色・翅型を発現する系統を作出し、それらの系統間の特性の比較を行った。特に、黒色・長翅型系統は、飛翔のエネルギー源であるトリアシルグリセロールの量が、羽化時ばかりでなく、飛翔を開始する羽化3日後にも高く、移動に好適な生理的特性を持つことが明らかになった。さらに、昨年度に引き続き、翅型・体色生活史特性を制御する遺伝子の同定を試みたが、成功には至らなかった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Bertuso, A.G., S.Tojo: "The nature and titer of juvenile hormone in the brown planthopper, Nilapalbat(Homoptera : Delphacidae) in relation to wing morphogenesis and oocyte"Applied Entomology and Zoology. 37・1. 117-125 (2002)
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[Publications] Bertuso, A.G., S.Morooka, S.Tojo: "Sensitive periods for wing development and precocious metamorphosis after precocene treatment of the brown planthopper, Nilaparvata lugens"Journal of Insect Physiology. 48・2. 221-229 (2002)
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[Publications] Yoshiga, T., S.Tojo: "Purification and characterization of biliverdin-binding vitellogenin from the hermolymph of the common cutworm, Spodoptera litura"Archives of Insect Biochemistry and Physiology. 50・1. 97-106 (2002)
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[Publications] Nyrata M., S.Tojo: "Utilization of lipid for flight and reproduction in Spodoptera litura (Lepidoptera : Noctuidae)"European Journal of Entmology. 99・2. 221-224 (2002)