2002 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的な根圏環境制御能強化による広域ストレス耐性向上に関する研究
Project/Area Number |
13460029
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大崎 満 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (60168903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 助教授 (70179919)
松井 博和 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (90109504)
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Keywords | 広域ストレス / 根圏環境制御 / PEPC / 酸性フォスターゼ / 菌根 / フィターゼ / 形質転換 / プロモーター |
Research Abstract |
1)根および地上部における各種ホスファターゼの発現解析 これまでに、ルーピンからは細胞壁局在型酸性ホスファターゼをコードするLASAP1および分泌型酸性ホスファターゼをコードするLASAP2の2つを単離した。今年度、新たにフィチン酸特異的と予想されるホスファターゼを新たに単離し、LASAP3と命名した。LASAP3はダイズにおいて単離されたフィチン酸特異的ホスファターゼ(フィターゼ)とアミノ酸配列と82%の同一性を示したが、基質特異性が低い酸性ホスファターゼをコードすると考えられるLASAP1およびLASAP2とはそれぞれ23%,30%、比較的PEPに対する特異性が高いホスファターゼをコードするタマネギ鱗茎由来のAcPEPPと30%の同一性であった。サイトウの発芽種子由来の酸性ホスファターゼにおいて、精製酵素の構造解析が行われ、その活性中心を構成するアミノ酸残基が7個存在することが明らかにされているが、今回単離したLASAP3においてもこの7つのアミノ酸残基は保存されていた。このことから、本酵素の脱水反応の機作は特異性の低い酸性ホスファターゼと基本的には同一であると予想された。LASAP3タンパク質の細胞内局在部位を推測するためにPSORT prediction programを実行したところ、peroxisomeに局在する可能性が最も高いという結果が得られた。また、同様のプログラムでiPSORTにこのアミノ酸配列を入力した際には、N-末端のアミノ酸配列はmitochondrial targeting peptideを持つ結果が得られた。いずれにしても、分泌されて機能するタイプの酵素ダンパク質ではないものと予想された。今後、LASAP2のシグナルペプチドをつないで分泌型フィターゼのキメラ遣伝子を作成し、土壌中に含まれる有機態リンのうち最も高い割合で存在するフィチン酸を効率的に利用させることが可能であると期待される。 2)酸性ホスファターゼを高発現させたイネ、タバコの生理解析 ルーピン根分泌性酸性ホスファターゼをコードするLASAP2のcDNAを導入したタバコ、およびプロモーター領域を含む遺伝子配列を導入したイネをこれまでに作成した。昨年度は個体レベルでLASAP2導入タバコの根から本酵素がルーピン根における成熟タンパク質と同等の性質を持つ酵素が分泌されることを報告した。今年度は、イネの野性株と遺伝子導入株およびトマト、タバコ(野性株のみ)の培養細胞を用いて無菌的に有機態リン(ポリリン酸、フィチン酸)の利用能を調査した。トマトにおいてはポリリン酸の利用が認められなかったが、他の植物細胞においてはフィチン酸もポリリン酸も利用された。イネにおいては野性株と遺伝子導入株で生育に大きな違いはなかった。イネは低リン含有率耐性が強いため、さらに長時間培養する必要があると思われる。現在、同様の手法で無菌的にインタクトな植物の水耕栽培を行い、イネの野性株と遺伝子導入株の生育およびリンの吸収量の調査を行っている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kai, M., et al.: "Molecular cloning and expression of phosphate transporter gene in Nicotiana tabacum L"Plant Science. 163(4). 837-846 (2002)
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[Publications] Wasaki, J., et al.: "Secreted acid phosphatase is expressed in cluster roots of lupin in response to phosphorus deficiency"Plant & Soil. 248. 129-136 (2003)
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[Publications] Tawaraya, K. et al.: "Arbuscular mycorrhizal colonization of tree species grown in peat swamp forests of Central Kalimantan, Indonesia"Forest Ecology and Management. (in press). (2003)