2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的な根圏環境制御能強化による広域ストレス耐性向上に関する研究
Project/Area Number |
13460029
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大崎 満 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (60168903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 助教授 (70179919)
松井 博和 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (90109504)
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Keywords | 広域ストレス / 根圏環境制御 / PEPC / 酸性フォスファターゼ / 菌根 / フィターゼ / 形質転換 / プロモーター |
Research Abstract |
1)ホスファターゼの発現(トランスジェニック) これまでに、ルーピン根分泌性酸性ホスファターゼをコードするLASAP2遺伝子をイネ、およびタバコに形質転換した。イネ、タバコとも根から高い活性を分泌する系統の存在が確認されたので、これの系統確立を実施した。同時に、ルーピンにおける経時的発現を調査したところ、体内リン酸濃度が低下してくると遺伝子およびタンパク質の発現、さらに分泌が誘導されることが明らかになった。また、ルーピンにおいては低リン条件下で「クラスター根」と呼ばれる特殊な形態の根を形成して外部からのリンの獲得において重要な役割を果たすが、このクラスター根における強い遺伝子発現、ならびに分泌が認められた。クラスター根における酸性ホスファターゼの機能発現もまた経時的に高まった。以上より、ホスファターゼの機能強化のためにはクラスター根の機能強化も重要であることが示唆された。 2)PEPC トウモロコシのC_4型PEPCをC_3型イネで高発現させた遺伝子組み換え系統を用いて、PEPCによる有機酸代謝の制御と、それによる植物の耐酸性や低リン耐性が改善されるかについて解析した。その結果、作物の低リン耐性や低pH(高Al)耐性を高めるためには、根におけるPEPCの高活性(発現)が重要であり、その高発現により有機酸が根から分泌され、Alイオンの無毒化と難溶性無機リンの可給化に貢献していた。しかし、PEPCの活性自体はAlイオンやリン栄養の影響を直接受けておらず、低リンや高Al(低pH)により有機酸分泌のアニオンチャンネルが活性化し、根内での有機酸減少がシグナルとなってPEPCが活性化することが推定された。 3)分泌物 根の浸出物によるアーバスキュラー菌根形成の調節機構を明らかにするため、水耕培養によりリン欠乏のタマネギ根の浸出物を回収し、各種クロマトグラフィーにより分離・精製した画分が菌糸成長に及ぼす影響について検討した。タマネギの根の浸出物の酢酸エチル層をからTLCによりRf値0.47のスポット(A1)が得られた。この画分および脱塩水中(対照区)でアーバスキュラー菌根菌Gigaspora margaritaの胞子を培養した。A1画分中での外生菌糸長および菌糸の2次以降の分岐数は対照区に比べて培養7日目に長くなった。菌糸の伸張と分岐を促進することより菌と宿主植物が根圏土壌中で接触する機会が増加し、これにより菌根形成が促進されている考えられた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Wasaki, J., et al.: "Transcriptomic analysis of metabolic changes by phosphorus stress in rice plant roots."Plant, Cell and Environment. 26. 1515-1523 (2003)
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[Publications] Yamamura, T., et al.: "Possibility of rhizosphere regulation using acid phosphatase and organic acid for recycling phosphorus in sewage sludge."Soil Science and Plant Nutrition. 50. 77-83 (2004)
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[Publications] Tawaraya, K. et al.: "Arbuscular mycorrhizal colonization of tree species grown in peat swamp forests of Central Kalimantan, Indonesia."Forest Ecology and Management. 182. 381-386 (2003)
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[Publications] Begum, H.H., et al.: "Role of phosphoenolpyruvate carboxylase in the adaptation of a tropical forage grass, Brachiaria hybrid, to low phosphorus acid soils."Journal of Plant Nutrition. (in press).
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[Publications] Begum, H.H., et al.: "Aluminum tolerant mechanisms in phosphoenolpyruvate carboxylase (PEPC) transgenic rice."Plant and Soil. (in press).