2001 Fiscal Year Annual Research Report
毛細血管と脂肪細胞の接触構造を作るラミニン-8の超分子会合
Project/Area Number |
13460039
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北川 泰雄 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50101168)
|
Keywords | ラミニン / 細胞外マトリックス / 脂肪形成 / プラスミノーゲン / プラスミノーゲン活性化酵素 |
Research Abstract |
ラミニンは組織構築に重要な細胞外マトリックスの主成分である。α,βとγの3本のペプチド鎖が会合した十字架状分子で、5種類のα鎖、4種類のβ鎖と3種類のγ鎖が互換的に会合した20余種類のラミニンがある。α4β1γ1の鎖組成を持つラミニン-8は、毛細血管外壁を作る内皮細胞や脂肪前駆細胞が分泌する。脂肪形成過程の電子顕微鏡切片像では、成熟中の脂肪細胞が毛細血管の外壁の内皮細胞に張り付いて血液から栄養分を吸収している様子が見える。わずか0.2μmの細胞間隙には薄いマトリックス構造が見え、これが細胞間の接触構造を支えている。本研究では、この本体が血液(プラスミノーゲン)と脂肪細胞(プラスミノーゲン活性化酵素)の接触点で起こるラミニン-8のG領域の切断で誘発される超分子会合によることを実証する。すなわち、分泌直後には5連球であるα4鎖C-末端のLG1-LG5は、毛細血管と脂肪細胞の接点で生じるプラスミンによって3連球と2連球に分けているリンカー部で切断され、正四面体の3陵をなすα4鎖LG1-LG3の3連球が"頭と頭"で会合した6球体構造を取る。これで二量体化したラミニン-8全体は、短腕でのカルシウム依存性のβ1鎖とγ1鎖の会合も手伝って超分子化して細胞間の接触構造を構築する。 このモデルを実証するために、CHO/DHFR系で量産したα4鎖LG1-LG5をエラスターゼ処理の後にヘパリンカラムで精製してα4鎖LG1-LG3とα4鎖LG4-LG5を取得する方法を確立した。現在、これらが化学架橋剤の存在下で2量体を形成するか否かを検討している。興味深いことに、これらの断片を脂肪新生系に添加するとα4鎖LG1-LG5では弱く、α4鎖LG1-LG3では強く、α4鎖LG4-LG5では非常に強く脂肪形成が抑制されることを発見した。この際のα4鎖LG4-LG作用濃度は20nMと極めて低い。このことは、α4鎖LG4-LG5がラミニン-8のα4鎖LG1-LG3における二量体化を競合的に阻害して脂肪細胞と毛細血管の接触構造形成を抑制することを示唆する。
|
-
[Publications] Tajima R, Kawaguchi N, Horino Y, Takahashi Y, Toriyama K, Inou K, Torii S, Kitagawa Y.: "Hypoxic enhancement of type IV collagen secretion accelerates adipose conversion of 3T3-L1 fibroblasts"Biochimica et Biophysica Acta. 1540(3). 179-187 (2001)
-
[Publications] Akira Goto, Takeshi Kumagai, Chino Kumagai, Junko Hirose, Hiroshi Narita, Hitoshi Mori, Tatsuhiko Kadowaki, Konrad Beck, Yasuo Kitagawa: "A Drosophila haemocyte-specific protein, hemolectin, similar to human von Willebrand factor"Biochemical Journal. 359(1). 99-108 (2001)
-
[Publications] Akira Goto, Makoto Aoki, Shigeyuki Ichihara, Yasuo Kitagawa: "α-, β- or γ-chain-specific RNA interference of laminin assembly in Drosophila Kc167 cells"Biochemical Journal. 360(1). 167-172 (2001)
-
[Publications] 北川泰雄, 山下泰恒: "末梢組織におけるラミニンα鎖Gドメインの役割"生化学. 73(10). 1227-1233 (2001)
-
[Publications] Kazuhiro Toriyama, Nobuko Kawaguchi, Junzo Kitoh, Rie Tajima, Kazuhiko Inou, Yasuo Kitagawa, Shuhei Torii: "Endogenous adipocyte precursor cells for regenerative soft-tissue engineering"Tissue Engineering. 8(1). 157-165 (2002)
-
[Publications] Tanaka K, Kitagawa Y, Kadowaki T.: "Drosophila segment polarity gene product porcupine stimulates the posttranslational N-glycosylation of wingless in the Endoplasmic reticulum"Journal of Biological Chemistry. (印刷中). (2002)