2002 Fiscal Year Annual Research Report
脂質酸化物による動脈硬化発症の分子機構と食品成分による制御
Project/Area Number |
13460059
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今泉 勝己 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (90037466)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永尾 晃治 佐賀大学, 農学部, 助手 (10336109)
佐藤 匡央 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (90294909)
|
Keywords | 脂質酸化物 / 動脈硬化 / イソプロスタン / ステロール酸化物 / アポE欠損マウス / マクロファージ / ABCA1 |
Research Abstract |
動脈硬化症の発症・進展には,安定な脂質酸化物である多価不飽和脂肪酸由来の酸化物(isoprostane類)やステロール酸化物の関与がある.これら安定な酸化物はヒトや動物が日常に営むなかで必然的に発生するものであるから,本研究はそれらの発生を極力抑制するとともに,発生したこれら酸化物が動脈硬化性疾患の発症や進展に導く分子機構を明らかにし,その知見に基づいてこれら酸化物の好ましくない作用を遮断するのに有益な食品成分を見いだし,動脈硬化抑制的食品を設計することを目標にしている.本年度の研究成果は以下の通りである. (1)GC/MSを用いて2種類のisoprostane(8-isoprostane F2αおよびdinor)を定量する方法を確立,尿,血漿と大動脈のそれらをアポE欠損マウスおよびその野性型(C57BL/6J)で測定した.その結果,予想に反して,これらisoprostane類の尿,血漿,大動脈における濃度は動脈硬化病変の程度とは直接的な関係が無いことが明らかとなった.食品成分摂取との関係について調査したところ,抗酸化作用がある大豆に含まれるインフラボンの摂取は尿中のisotrostane排泄量に影響しなかったが,コーヒーでの含有量が高いクロロゲン酸はその排泄量を顕著に減少させた.これらの結果は,生体酸化のバイオマーカーであるisoprostaneの測定の有用性について疑問を投げかけるものである.(2)マクロファージからのコレステロールの搬出とステロール酸化物との関係について検討した.まず,22-ヒドロキシコレステロールがマクロファージからのコレステロール搬出を亢進するとともに,転写調節因子であるLXRのリガンドとしてコレステロール搬出タンパク質であるABCA1の発現量ならびにタンパク質量を増加させることを確認した.コレステロール,カンペステロールとβ-シトステロールの酸化物中にはマクロファージにおけるコレステロールの搬出を促進あるいは抑制するものが含まれていることを明らかにすることができた.(3)動脈硬化を抑制する食品設計を行うために,アポE欠損マウスを用いて,タンパク質,脂質,ビタミン,非栄養素の抗動脈硬化作用を検討し,植物性タンパク質,インフラボン,α-トコフェロール,多価不飽和脂肪酸に抗動脈硬化作用を見いだした.
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] Weihua Ni et al.: "Antiatherogenic effect of soy and rice protein isolate, compared with casein, in apolipoprotein E-deficient mice"British Journal of Nutrition. (in press). (2003)
-
[Publications] Miyuki Ando et al.: "Dietary cholesterol-oxidation products accumulate in serum and liver in apolipoprotein E-deficient mice, but do not accelerate atherosclerosis"British Journal of Nutrition. 88. 1343-1351 (2002)
-
[Publications] H.Tomoyori et al.: "Lymphatic transport of dietary cholesterol oxidation products, cholesterol and triacylglycerols in rats"Bioscience, Biotechnology, & Biochemistry. 66. 828-834 (2002)
-
[Publications] M.Iwamoto et al.: "Differential effect of walnut oil and safflower oil on the serum cholesterol level and lesion aea in the aortic root of apolipoprotein E-deficient mice"Bioscience, Biotechnology, & Biochemistry. 66. 141-146 (2002)
-
[Publications] Weihua Ni et al.: "New anti-monocyte Chemoattractant protein-1 gene therapy attenuates atherosclerosis in apolipoprotein E-knockout mice"Circulation. 103. 2096-2101 (2001)