2003 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の生存に影響をおよぼす木部エンボリズム発生機構の解明
Project/Area Number |
13460071
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
池田 武文 京都府立大学, 農学研究科, 助教授 (50183158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸田 恵美子 東邦大学, 理学部, 助教授 (90229609)
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Keywords | キャビテーション / エンボリズム / 木部 / 水ストレス / マツ属 / 高山帯 / ハイマツ / マツ材線虫病 |
Research Abstract |
1.アカマツ木部のキャビテーションに対する感受性の解明 マツの苗木にマツノザイセンチュウを接種した後、木部のキャビテーション感受性を空気注入法で作成したvulnerability curveを解析することで評価した。マツノザイセンチュウ接種後のvulnerability curveの変化から、低い注入圧でもキャビテーションが発生し、さらに低い注入圧で水分通導機能を失うことがわかった。さらに、vulnerability curveから水分通導度が半分に低下するmean cavitation pressureを計算したところ、樹体の部位には関係なく、地上部、地下部ともにキャビテーション感受性の高まりを確認した。このことから、マツノザイセンチュウが侵入したマツでは、健全なマツでは起こりえないような水不足の程度でもキャビテーションが発生するために、急激に木部の水分通導機能が失われることでマツが枯死すると考えられた。さらに、当初計画していなかった新しい実験をおこなった。つまり、マツの樹体内でおきるエンボリズムを非破壊的に観察するために、MRI(磁気共鳴画像解析)装置をつかった診断をこころみた。その結果、外観的な病徴が見られない時期にすでにマツの木部内ではエンボリズムが発生していること、外観的な病徴があらわれたときには木部のかなりの部位でエンボリズムが広がっていることがわかった。以上の結果から、マツ材線虫病によるマツの枯死は樹体内でおこるキャビテーションとエンボリズムが重大な役割を果たしていることがわかった。 2.ハイマツの木部のキャビテーションに対する感受性の解明 乗鞍岳の標高2750m付近に分布するハイマツ林で、春に針葉が褐変化するシュートと健全なシュートで木部のキャビテーション感受性の季節変化を比較した。両者ともに夏季に発生するキャビテーションによって木部水分通導性は低下するが、健全シュートでは9月以後水分通導性が回復するのち対して、褐変化するシュートでは10月の時点でもさらに水分通導性が低下し、このとき針葉はまだ積雪下にはないので、脱水が促進されて水分バランスが崩れ、針葉が褐変化すると考えられた。 以上より、樹木の木部でキャビテーションが発生すると、限界環境で生育する樹木や萎凋病に罹病した樹木にとっては致命的であることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)