Research Abstract |
木材を熱変換したときの収率は,処理温度200℃までほとんど変化なく,200〜300℃の間で急激に減少し,300℃以上で緩慢に減少し,600℃以上でほぼ一定値となった。周波数10kHzにおける電気伝導率は,処理温度が200℃まで変化なく,その後若干減少し,400℃以上で増加をはじめ,800℃までほぼ単調に増加した。-40℃における誘電損失と周波数の関係にsech則を適用して求めた非結晶領域のメチロール基の配向に基づく緩和強度は,処理温度200℃まで変化なく,その後急激に減少し,300℃で0となった。20℃におけるCole-Coleプロットより求めた緩和強度においても同じ傾向が得られた。この結果から,処理温度300℃以上になると,メチロール基は,熱分解によって完全に消失することが明らかとなった。処理温度400℃以上になると,全乾燥状態において,20℃,1kHz〜10MHzの領域に,非常に大きな損失正接のピークが観測された。その位置は,処理温度が高くなるにつれて,高周波数側に移動した。この処理温度では,熱変換木材には永久双極子は,ほとんど存在しないと考えられ,高い導電性をもつ炭化した部分が不規則に形成されているものと考えられる。したがって,この緩和は,Maxwell-Wagner型の不均一誘電体に認められるものと推定され,不均一誘電体モデルを用いて,この緩和について定量的な考察を行った。相対湿度100%で調湿した処理温度270℃までの熱変換木材には,-150〜0℃,10kHz〜1MHzの領域に,メチロール基の緩和に加えて,水酸基などの吸着点に吸着した水に関係する緩和が認められた。吸着水の緩和の平均緩和時間は,等しい緩和時間時間で比べると,処理温度が高くなるにつれて,高温側に移動した。しかし,処理温度が300〜500℃になると,270℃以下のものとは異なる水に関係する緩和挙動が認められた。このことから,水酸基などの吸着点が消失する処理温度を境として,熱変換木材における水分の吸着機構が大きく変化することが明らかとなった。
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