2002 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的汚染をまねくモザイク魚介類の出現機構と育種形質への影響の解明
Project/Area Number |
13460079
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒井 克俊 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 教授 (00137902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 誠一 北里大学, 水産学部, 講師 (60224169)
山羽 悦郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (60191376)
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Keywords | モザイク / 倍数体 / 染色体操作 / 育種 / フローサイトメトリー / 胚操作 / キメラ / 魚介類 |
Research Abstract |
1.アマゴ卵の卵割阻止処理(650Kg/cm^2,6分間)において、四倍体は受精4-6時間後処理の異常胚に、二倍体-四倍体モザイクは受精5.5-7.25時間後処理の正常胚に高い率で見られた。7ヶ月令魚には完全な四倍体は見られず、いずれかの器官において四倍体細胞を含む、器官別の二倍体-四倍体モザイクであった。従って、血液、鰭等の倍数性判定のみでは、二倍性の配偶子を産生しうる四倍体生殖細胞系列をもつ個体を見逃す可能性が示された。 2.アマゴにおける二倍体-四倍体モザイクは成熟可能であり、産出された大型の卵は二倍性の卵核をもつことが明らかになった。また、四倍体雄の産する精子は頭部が大きかった。従って、配偶子のサイズを指標として、四倍体生殖細胞系列をもつモザイク親魚を選抜し、次世代において三倍体、四倍体を染色体操作なしに交配のみで作出することが可能になった。 3.エゾアワビにおいては、三倍体作出を目的としたカフェイン処理による極体放出阻止群において、昨年度のサイトカラシンB処理群と同様に、三倍体、二倍体にまじって、二倍体-三倍体モザイクが認められた。倍数性の相違は、同一個体の異なる触手間でも認められ、器官によりモザイク性が異なることが示された。昨年度にひきつづき、モザイクの殻長、体重の追跡を行ったが、目下(25ヶ月令)のところ形態異常、成長障害は見られない。 4.野生集団のギンブナおよびドジョウについて、自然発生モザイクの存否を明らかにするため、倍数性判定を行ったところ、前者では三倍体-四倍体の、後者では二倍体-三倍体のモザイクがごく低頻度で出現した。これらは、各々雌性発生三倍体ギンブナおよびクローン二倍体ドジョウを起源とし、精子の偶発的遅延受精により生じた可能性が示唆された。
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[Publications] 山木勝, 荒井克俊: "卵割阻止型雌性発生胚に由来する半数体-二倍体モザイクアマゴ"水産育種. 31・1. 91-96 (2002)
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[Publications] 山羽悦郎, 村上賢, 武山悟, 森島輝, 大谷哲, 堀江晋, 田中稔, 藤本貴史, 大嶋耕造, 阪尾寿々, 相田貴紀, 荒井克俊: "北海道厚岸町床潭沼のフナ集団に見られた倍数体およびモザイク個体"水産育種. 32・1. 19-26 (2002)
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[Publications] 山木勝, 佐藤浩平, 山口聡, 荒井克俊: "卵割阻止処理に由来するアマゴOncorhynchus masou isikawaeの様々な器官に見られるモザイク性"水産育種. 32・2. 93-101 (2002)
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[Publications] 山羽悦郎, 木村志津雄, 田中稔, 阪尾寿々, 藤本貴史, 荒井克俊: "カットスロートトラウトSalmo clarkiに見られた半数体-二倍体モザイク胚"水産育種. 32・2. 121-126 (2002)
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[Publications] M.Tanaka, S.Kimura, T.Fujimoto, S.Sakano, E.Yamaha, K.Arai: "Spontaneous mosaicism occurred in normally fertilized and gyno-genetically induced progeny of the kokanee salmon, Oncorhynchus nerka"Fish. Sci.. 69・1. 174-178 (2003)
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[Publications] 山木勝, 荒井克俊: "二倍体-四倍体モザイクアマゴにおける卵のサイズと倍数性"日本水産学会誌. (印刷中). (2003)