2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13460083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 知彦 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (30323629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 豊充 中央水産研究所, 海域水産業, 研究室長
渡邊 良朗 東京大学, 海洋研究所, 教授 (90280958)
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Keywords | アワビ類 / 初期生態 / 繁殖生態 / 減耗要因 / 新規資源加入 |
Research Abstract |
1.神奈川県長井沿岸において南方系アワビ類の分布調査を行った結果、トコブシは浅所の比較的広い範囲に分布していたが、大型アワビ類は禁漁区内にのみ比較的高密度に分布し、一般の漁場における分布密度は非常に低いことが明らかとなった。 2.アワビ類幼生の着底基質である無節サンゴモの繁茂した転石表面を精査した結果、2000年生まれの天然発生稚貝(当歳貝)が発見された。大型アワビ類の稚貝は、低密度ながら浅所から水深10m付近の岩盤上からも見つかったが、トコブシ稚貝は主に水深3m以浅の転石地帯で多く採集された。 3.各種アワビ類の産卵期にプランクトンネットと水中ポンプを用いて浮遊幼生の採集を行い、同時に人工付着器と無節サンゴモの繁茂した転石上に着底した初期稚貝の採集を行った。着底直後のトコブシ初期稚貝は調査地点付近を台風が通過した数日後にのみ採集された。北方系のエゾアワビで考えられているのと同様、トコブシの放卵放精も台風規模の時化により一斉に誘発される可能性が示唆された。大型アワビ類の着底初期稚貝も特定の日に多く採集されたが、明確な要因は認められなかった。初期稚貝は、親貝密度の高い禁漁区近くで高密度に出現し、2000年生まれの稚貝が見つかった浅瀬にはほとんど出現しなかった。調査地点周辺の流向流速データを予備解析した結果、この初期稚貝の分布の偏りは海流によって説明できるものと考えられた。なお、採集した浮遊幼生の解析は現在継続中である。 4.対照として研究を行っている北方系のエゾアワビについて、その食性変化の機構と減耗要因について解析を行った。その結果、摂餌器官である歯舌の形態変化に伴って食性が転換していることがわかった。また、初期稚貝は他の植食性巻貝類と餌料となる微細藻類を巡って競合関係にあり、それら他種巻貝類の分布密度はエゾアワビ初期稚貝の成長と生残に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 高見秀輝, 河村知彦, 伊藤秀明, 清藤真樹, 柳谷 智, 山下 洋: "エゾアワビ初期稚貝と小型食性巻貝の餌料を巡る競合関係"東北区水産研究所研究報告. 64. 43-51 (2001)
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[Publications] T.Kawamura, H.Takami, R.D.Roberts, Y.Yamashita: "Radula development in abalone Haliotis discus hannai form larva to adult in relation to feeding transitions"Fisheries Science. 67(4). 596-605 (2001)
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[Publications] 河村知彦: "海底の岩盤上・葉上に生育する付着珪藻類の動態"日本プランクトン学会誌. 48(2). 128-130 (2001)
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[Publications] T.Kawamura, H.Takami, T.Saido: "Early life ecology of abalone Haliotis discus hannai in ralation to recruitment fluctuations"Fisheries Science. 68(印刷中). (2002)