2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13460083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 知彦 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (30323629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 豊充 中央水産研究所, 研究室長
渡邊 良朗 東京大学, 海洋研究所, 教授 (90280958)
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Keywords | アワビ類 / 初期生態 / 繁殖生態 / 滅耗要因 / 新規資源加入 |
Research Abstract |
1.トコブシの摂餌器官である歯舌の構造の成長に伴う変化を走査型電子顕微鏡を用いて詳細に調べ、既に成長に伴う食性の変化と歯舌の形態変化の関連が明らかになっている(平成13年度研究成果)エゾアワビの歯舌構造と比較することにより、トコブシの成長段階毎の食性を推定した。トコブシの歯舌の基本的構造はエゾアワビとほぼ同じであり、その発達過程もきわめてよく似ていた。しかし、初期発達の速度がエゾアワビに比べて概して遅く、食性の転換時期が遅いことが示唆された。すなわち、着底直後からの初期餌料である粘液物質を主餌料とする時期が長い可能性が考えられた。一方、大型海藻の幼体を摂餌するために必要と考えられる外部側歯の発達は比較的早く、エゾアワビと同様に殻長2mm前後から海藻幼体を利用できるものと考えられた。 2.長井沿岸の禁漁区内とほぼ同水深の一般漁場内において、人工の付着基質および無節サンゴモの繁茂した転石上から採集されたアワビ類稚貝の種組成(クロアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ、トコブシ)を解析した結果、成貝(親資源)の種組成に比べてクロアワビ稚貝の出現頻度が有意に低いことが明らかとなった。一方、同時期に採集した浮遊幼生の種組成には成貝の種組成と有意な差は認められなかった。クロアワビ浮遊幼生の着底場や着底機構が他種と異なる可能性が示唆された。 3.対照として研究を行っているエゾアワビについて、着底初期の稚貝が同所的に生息する小型巻貝エゾザンショウと餌料を巡る競合関係にあることが示唆されている(平成13年度研究成果)。エゾザンショウの水温別摂食量および摂食選択性を詳細に調べ、三陸沿岸のエゾアワビ着底場におけるエゾザンショウの密度と比較検討した結果、三陸沿岸のエゾアワビ着底場には、エゾアワビ初期稚貝の主要餌料となる付着珪藻を食い尽くす量のエゾザンショウが生息する場所が存在することが明らかとなった。そのような場所では、初期の餌料不足が重大な減耗要因になっているものと考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] H.Takami, T.Kawamura: "Dietary transitions in the abalone Haliotis discus hannai and the relationship with development of digsctive organ."Japan Agricultural Research Quarterly. 37. 91-100 (2003)
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[Publications] H.Takami, D.Muraoka, T.Kawamura, Y.Yamashita: "When is the abalone Haliotis discus hannai Ino 1953 first able to use brown macroalgae?"Journal of Shellfish Research. 22. 795-800 (2003)
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[Publications] T.Kawamura, H.Takami, Y.Yamashita: "Effects of grazing by a herbivorous gastropod Homalopoma amussitatum, a competitor for food with post-larval abalone, on a community of benthic diatoms"Journal of Shellfish Research. 23(印刷中). (2004)
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[Publications] T.Onitsuka, T.Kawamura, S.Ohashi, T.Horii, Y.Watanabe: "Morphological changes in the radula of abalone Haliotis diversicolor aquatilis from the post-larval to the adult stage."Journal of Shellfish Research. 23(印刷中). (2004)