2001 Fiscal Year Annual Research Report
交雑個体群有明海スズキの遺伝的集団構造と両側回遊性
Project/Area Number |
13460085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 克 京都大学, 農学研究科, 教授 (20155170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 拓史 愛媛大学, 理学部, 助教授 (00128472)
藤原 建紀 京都大学, 農学研究科, 助教授 (30243075)
西田 睦 東京大学, 海洋研究所・生物資源学部, 教授 (90136896)
中山 耕至 京都大学, 農学研究科, 助手 (50324661)
田川 正朋 京都大学, 農学研究科, 助教授 (20226947)
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Keywords | 有明海スズキ / 交雑個体群 / 両側回遊性 / 筑後川河口域 / ミトコンドリアDNA / 耳石微量元素 / 耳石日周輪 |
Research Abstract |
スズキの産卵期は12〜1月であり,発育の進んだ仔魚や稚魚は3月より筑後川河口域や下流域に出現するため,平成13年3月より調査を始め,7月まで幼稚魚の採集を行った.これらの採集で得られた仔稚魚とともにこれまでの調査で有明海の色々な海域で集めた仔稚魚,未成魚及び成魚を用いて,胃内容物組成,耳石日周輪によるふ化日,耳石年輪による成長,生殖腺指数,安定同位体比分析,耳石微量元素分析及びミトコンドリアDNAハプロタイプ分析を行った.得られた結果は以下のように要約できる. 1)筑後川河口域の低塩分域に溯上したスズキ仔稚魚の主要な餌生物は大陸遺存性かいあし類Sinocalanus sinensisであり,この餌生物は体長40mmまで胃内容物中に優占した.体長40mmを越えると主な餌生物はアミ類Acanthomysis longirostrisへの移行した. 2)1997年より2000年に採集された仔稚魚の耳石日周輸を精査した結果,年によって半月程度の差異は見られるもののふ化日は12月中旬〜1月中旬に集中した。 3)耳石年輪の形成を確認し,これを用いて年齢を推定したところ,これまで報告されている最も高い成長を示す瀬戸内海のスズキと同等の成長を示した. 4)生殖腺指数の周年変化より,産卵期は12〜1月と推定された. 5)スズキと餌生物の安定同位体比を分析した結果,δ13cはスズキの回遊履歴を示す指標として有効であることを確認した. 6)産卵場と推定される長崎県島原市で採集されたスズキ成魚の2割は淡水履歴を示す個体であったが,対岸の熊本県三角で採集された成熟には淡水履歴を示す個体は認められなかった. 7)上記の成魚のmtDNAを分析した結果,島原群ではタイリクスズキ型ハプロタイプが高い比率で確認されたが,三角群ではこれとは逆にスズキ型ハプロタイプが高い比率を占めた.
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