2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13470054
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
松浦 晃洋 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70157238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杵渕 幸 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教授 (30244346)
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Keywords | CD1 / 肝炎 / 劇症化 / NKT細胞 / サイトカイン |
Research Abstract |
肝炎の重症化および劇症肝炎は肝炎ウィルスによるもの、薬剤によるもの、原因不明のものがあり、致死率が高く、発症前の診断と適切な制御法の開発が急務である。病因により肝細胞傷害の機序が違うことが示唆されている。細胞傷害性T細胞系のFas/Fasリガンド、TNF/TNFレセプターシステムによるアポトーシス、クッパー・マクロファージ系の関与、酸化ストレスや中毒性機構などである。NKT細胞はサイトカイン分泌(IL-4とIFNgamma)を介して、Th1/Th2バランスを決定的に制御することが明らかにされている。我々はこれまでの動物実験により、NKT細胞は肝臓類洞内に多く存在し、肝炎の重症化に重要な指標となり、直接的な役割を果たすことを見いだした。すなわち、1)肝炎自然発症ラットを通常飼料で飼育し、黄疸の有無、血清トランスアミナーゼ値などで経過を観察し、急性肝炎発症ラットのうち約80%が黄疸を認めた後、数日以内に重症化し、hyperacute liver failureにて死亡する。この際劇症化個体は早期に(黄疸発症後3日〓7日以内)に血清ビリルビン値が3mg/dl以上となり、肉眼的にも黄疸、消耗が顕著なことから、重症化(劇症化)の指標を決定できた。2)肝炎発症前、肝炎発症後、重症化後のラット肝臓の組織学的観察により、肝炎発症前にはほぼ正常で、急性肝炎発症後には肝細胞の大型化と核の腫大、クッパー細胞の増加、肝細胞の単細胞壊死がみられたが、劇症化時には亜広範性壊死、クッパー細胞の増加、類洞内リンパ球の浸潤の増加が見られた。つまり、肝炎発症と重症化の違いは壊死の程度・範囲とリンパ球浸潤であった。以上より、急性肝炎の発症は細胞傷害性因子(重金属:銅、フリーラジカルなど)が重要であり、劇症化にはリンパ球を含めた免疫系の関与が示唆された。3)肝炎発症前、肝炎発症後、重症化後のラット血清サイトカインを測定したところ、TNFalphaとIFNgammaが重症化時にわずかに上昇することがわかった。さらに、ヒトの肝炎症例を地道に蓄積し、病理学的・分子生物学的・免疫学的に詳しく解析することにより、以下の知見を得た。4)ヒトの先天性銅代謝異常疾患であるウィルソン病の同胞例(2名)で、同一の変異遺伝子を両方のアリルに保有する未発症例を経過観察した。1名は肝障害を発症し、もう1名は発症しなかった例について、両者とも肝臓への銅蓄積は同程度であり、組織学的にもほとんど差がないにもかかわらず、前者では末梢血中NKT細胞のなかの、特に、不変T細胞レセプター鎖を保有するものが著名に増加していた。さらに、詳しい検索と経過観察をしているが、ヒトの肝炎においても重傷化、劇症化にはNKT細胞(特に、自己反応性)の出現が重要な役割を果たすことを明らかにした。さらに、劇症肝炎例での劇症化時の知見も蓄積している。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Kitazawa J, Kinebuchi M, Matsuura A, et al.: "Hemolytic crisis with fulminant hepatic failure in Wilson disease without consanguinity : difficulty in decisive diagnosis and dramatic outcome of liver transplantation"Pediatr Intern. In press.
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[Publications] Nakashima S, Matsuura A, et al.: "Antiproliferative effects of NKH477, a forskolin derivative, on cytokine profile in rat lung allografts"J Heart lung transplant. In press.
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[Publications] Tanaka H, Saikai T, Matsuura A, et al.: "Mechanism of new type of occupational allergy in mushroom workers"Res.Signpost. In press.
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[Publications] Kinebuchi M, Akihiro Matsuura A, et al.: "NKT cells are activated and own cytotoxicity at the early stage of fulminant hepatitis in Wilson disease"J Hepatol. In press.
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[Publications] Saikai T, Tanaka H, Sato N, Abe S, Matsuura A: "Mushroom plant workers experience a shift towards a T helper type 2 dominant state : Contribution of innate immunity to spore antigen"Chin Exp Immunol. 135・2. 119-124 (2004)
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[Publications] Kinebuchi M, Matsuura A: "Rat T-cell receptor TRAV11 (Va14) genes : further evidence of extensive multiplicity with homogeneous CDR1 and diversified CDR2 by genomic contig and cDNA analysis"Immunogenetics. 55・11. 756-762 (2004)
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[Publications] 松浦晃洋: "病態病理学(新病理学総論改訂第17版)第3章ヒトゲノムの分子遺伝学"南山堂(印刷中). (2004)