2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規プリオン類似蛋白の生理機能解明と病原性(第2のプリオン可能性)の追求
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13470065
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
片峰 茂 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40161062)
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Keywords | プリオン病 / プリオン蛋白 / プリオン類似蛋白 / 遺伝子改変マウス / 海綿状変性 |
Research Abstract |
我々が作成したプリオン蛋白欠損(Ngsk Prnp^<0/0>)マウスは、生後約1年すると小脳プルキンエ細胞変性を伴う失調性歩行を呈する。しかし、他で作成されたZrch I Prnp^<0/0>マウスではプルキンエ細胞変性死は認められず、なぜこのような差異が生じるか不明であった。最近、我々はPrP遺伝子の下流にPrP類似蛋白(PrP-like protein, PrPLP/Dpl)をコードする遺伝子を発見した。興味深いことに、PrPLP/Dpl遺伝子がNgsk Prnp^<0/0>マウスでは過剰発現するが、Zrch I Prnp^<0/0>マウスでは発現は認められなかった。これらの結果から、Ngsk Prnp^<0/0>マウスに認められた小脳プルキンエ細胞変性死には、プリオン蛋白(PrP^c)の正常機能消失とPrP類似蛋白(PrP-like protein, PrPLP/Dpl)の過剰発現の両者が関与していると考えるに至った。そこで、PrP^cは消失しているがPrPLP/Dplを発現しないZrch I Prnp^<0/0>に、神経細胞またはプルキンエ細胞特異的にPrPLP/Dplを発現させ、プルキンエ細胞変性死がおこるかどうかを検討した。その結果、これらのTg(PrPLP/Dpl).Zrch I Prnp^<0/0>マウスは全て小脳失調性歩行を来しプルキンエ細胞変性死を呈した。また、これに遅れて、Tg(PrPLP/Dpl).Zrch I Prnp^<0/+>マウスでもプルキンエ細胞変性死が認められた。しかし、Tg(PrPLP/Dpl).Zrch I Prnp^<+/+>マウスでは現在のところプルキンエ細胞変性死は認められていない。これらの結果は、Prnp^<0/0>マウスに認められたプルキンエ細胞変性死がPrPLP/Dplの過剰発現によって起こり、またPrP^cが発現量依存的にPrPLP/Dplの神経変性作用を阻害することを示している。
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