2003 Fiscal Year Annual Research Report
室内環境化学物質のアレルギー応答変容作用とシックハウス症候群との関連に関する研究
Project/Area Number |
13470078
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
吉田 貴彦 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90200998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中木 良彦 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90322908)
伊藤 俊弘 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20271760)
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Keywords | シックハウス症候群 / ホルムアルデヒド / 遅延型アレルギー / 異数性染色体 / 消化管細菌巣 / 肝サイトカイン応答 |
Research Abstract |
いわゆるシックハウス症候群ではアレルギー類似の症状が前面に出るなど免疫機構が関わりを持つと言われていることから、住居内空気を汚染する環境化学物質の代表的な物質であり、シックハウス症候群の原因物質としても最も頻度の高いホルムアルデヒドをマウス(B6C3F1雌性)に曝露し、これの免疫学的検索および既知アレルゲンを投与して実験的に惹起した即時型および遅延型アレルギーの変容を指標として健康影響を評価した。また、ホルムアルデヒドを曝露した無処置マウスにおいて、シックハウス症候群の患者で観察されることがある生体影響を念頭において観察を行った。さらに、飲食物から摂取されるホルムアルデヒドの影響についても検討した。500ppbホルムアルデヒドの週5日4週間曝露によって、抗体産生応答およびリンパ球幼若化応答の亢進、細胞性アレルギー応答の感作および症状発現の両段階において増強されることが観察された。また、一部の患者に見られることが知られている、末梢リンパ球の異数性染色体の発現頻度の増加が観察され、さらに脳内(海馬および嗅球)でのプロラクチン産生の亢進という新しい知見も観察され、近年にシックハウス症候群の発症機序に嗅球-大脳辺縁系が関与するという報告と符合する結果が得られた。また、ホルムアルデヒド処理を行った実験用動物飼料を摂取させたマウスでは腸内細菌数が濃度依存的に顕著に減少したのに対して、同様量のホルムアルデヒド水溶液を摂取させた群では減少の度合いは軽微であった。前者においては肝臓におけるエンドトキシン誘導性サイトカイン応答の腸内細菌減少時に見られる変容も観察された。以上より、マウスへの経気道、経口両者のホルムアルデヒドへの曝露が、免疫・アレルギー応答に変容をもたらし、かつ同時にシックハウス症候群と同様の生体影響が観察されるなど関連性のあることが示唆された。
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