Research Abstract |
1.受傷後経過時間の異なるヒト皮膚損傷試料(I群:0-12時間,II群:1-4日,III群:7-14日,IV群:17-21日)について,IL-8,MCP-1及びMIP-1αの発現を免疫組織化学的に検討した.I群では主として好中球に各ケモカインの陽性所見が観察され,II-IV群ではマクロファージ及び線維芽細胞が陽性となった.全浸潤細胞に対する各ケモカイン陽性浸潤細胞の割合を求めたところ各々の陽性率の変化は類似パターンを示した.すなわち,I群ではいずれの陽性率も低く,II群で急激な上昇が認められ,その後減少傾向に転じた.法医病理学的にこれらのケモカインが皮膚損傷の受傷後経過時間判定のための有用な指標となるものと考えられ,IL-8陽性率が50%以上,MCP-1陽性率が30%以上,MIP-1α陽性率が40%以上であれば,受傷後1日以上の損傷であることを示すものと考えられた.(Kondo T et al., Int.J.Legal Med. (2002)116,87-91). 2.ユビキチン(Ub)の皮膚損傷治癒過程における発現を免疫組織化学的に検索した.マウス皮膚損傷におけるUb発現細胞を観察すると,好中球,マクロファージ及び線維芽細胞の核にUb陽性所見が観察された.さらに受傷後経過時間の異なるヒト皮膚損傷試料(I群:0-12時間,II群:1-5日,III群:7-14日,IV群:17-21日)についてUb発現を免疫組織化学的に検討したところ,マウスと同様に好中球,マクロファージ及び線維芽細胞の核に陽性所見が観察された.全浸潤細胞に対するUb陽性浸潤細胞の割合をUb発現量としたところ,I群でUb陽性率が低かった.II及びIV群では全例で陽性率が10%以上,III群では20%以上であった.Ub発現量について,III群と他の3群の間には有意差が認められた.以上のことから,法医実務的にUbが皮膚損傷の受傷後経過時間判定に有用な指標となることを明らかにした.(Kondo T et al., Int.J.Legal Med. (2002)116,87-91). 3.TNF-Rp55遺伝子欠損マウスと野生型マウスの比較検討により,マウス皮膚創傷治癒過程におけるTNF-TNF-Rp55シグナル伝達系の役割を調べた結果,血管新生及びコラーゲン産生には抑制的に働いており一方,創部への白血球浸潤,サイトカイン及びケモカイン産生には促進的に働いていることが明らかとなった.以上の結果と相まって,TNF-TNF-Rp55シグナル伝達系の役割は治癒を遅延する働きがあることが明らかとなった.よって,TNF-TNF-Rp55シグナル伝達系は皮膚創傷治療のターゲットとして応用できると考えられる.(Mori R et al.,FASFB J. (2002)16,963-974)
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