2003 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアβ酸化異常症日本人患者の病態・病因の解明
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13470165
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Research Institution | Shimane University, Faculty of Medicine |
Principal Investigator |
山口 清次 島根大学, 医学部, 教授 (60144044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 正彦 島根大学, 医学部, 講師 (00263533)
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Keywords | 先天代謝異常 / β酸化異常症 / 質量分析 / 遺伝子解析 / VLCAD欠損症 / グルタル酸血症2型 / マススクリーニング |
Research Abstract |
平成15年度に以下のような研究成果を得た 1.日本人VLCAD欠損症患者の酵素診断、病因解析を行なった。現在までに21例の患者を同定した。特にこの2年間で10例以上の患者を発見し、日本人に予想以上に多いことがわかった。 2.欧米のVLCAD欠損症は半数以上が臨床的に重症であるのに対し(乳児重症型および中間型)、日本人患者21例中18例が骨格筋型であった。日本人患者は欧米の症例に比べ臨床的には軽症が多い傾向のあることが示唆された。 3.日本人VLCAD欠損症患者21例の分子レベルの解析結果を検討した。臨床的重症度と残存酵素活性測定値の間には相関はなく、イムノブロットにおける酵素タンパク量と相関することが観察された。 4.VLCAD欠損症の遺伝子解析において、骨格筋型では少なくとも一方のアレルに残存活性を持つ点変異を持っていた。本症にはphenotype/genotype correlationがあることが推察された。 5.グルタル酸血症2型の分子レベルでの検討を進めた。日本人初のETF脱水素酵素欠損による症例を同定した。またあらたにETF欠損による日本人症例も同定した。今後さらに遺伝子レベルで検討し、本症の日本人患者の遺伝的特徴を明らかにしたい。 6.グルタル酸血症2型は、安定期にある患者ではタンデムマスでも、GC/MSによる有機酸分析でも診断を見逃すことがあるが、我々はGC/MSを用いて血清中遊離脂肪酸分析による診断法を検討し、この方法がもっとも有用なことを確かめた。 7.インフルエンザ脳症患者の検体を全国から集めて、β酸化異常症のスクリーニングを行なったところ、今年度20例中3例にβ酸化異常の疑われる患者を同定した(CPT2欠損症2例、非ケトン性ジカルボン酸尿症1例)。インフルエンザ脳症を含む小児の急性脳症の背景疾患としてβ酸化異常症は今後重要視すべきである。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] Shigematsu Y: "Selective screening for fatty acid oxidation disorders by tandem mass spectrometry : difficulties in practical discrimination"Journal of Chromatography B. 792. 63-72 (2003)
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[Publications] Yoshino M: "Effect of supplementation with L-carnitine at a small dose on acylcarnitine profiles in serum and urine and the renal handling of acylcarnitines in patient with multiple acyl-coenzyme A dehydrogenation defect"Journal of Chromatography B. 792. 73-82 (2003)
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[Publications] Kimura M: "A sensitive method for 4-hydroxybutyric acid in urine using gas chromatography-mass spectrometry"Journal of Chromatography B. 792. 141-144 (2003)
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[Publications] Fukao T: "The mitochondrial acetoacetyl-CoA thiolase (T2) deficiency in Japanese patients : urinary organic acid and blood acylcarnitine profiles under stable conditions have subtle abnormalities in T2-deficent patients with some residual T2 activity"J Inher Met Dis. 26. 423-431 (2003)
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[Publications] Kimura M: "Normalization of low biotinidase activity in a child with biotin deficiency after biotin supplementation"J Inher Met Dis. 26. 715-719 (2003)
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[Publications] 津留智彦: "横紋筋融解症で発生した極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症の5才男児例"日本小児科学会雑誌. 107(3). 503-507 (2003)
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[Publications] 山口清次: "有機酸代謝異常の診断と治療-新生児マススクリーニングに向けた新しい動き"医学のあゆみ. 206(9). 644-649 (2003)
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[Publications] 堀大介: "有機酸血症の発症時期と予後:発症後に診断された患者の調査結果から"日本マス・スクリーニング学会雑誌. 13. 31-37 (2003)
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[Publications] 山口清次: "新生児マススクリーニングの最近の動向"日本小児科学会雑誌. 107. 1321-1326 (2003)
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[Publications] 伊藤康: "乳児期発症筋型極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症の1例"脳と発達. 35. 491-497 (2003)
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[Publications] 山口清次: "有機酸・脂肪酸代謝異常症のマス・スクリーニングの意義"特殊ミルク情報. 39. 12-19 (2003)
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[Publications] 坂田尚広: "再発性横紋筋融解症を呈し、生検筋の免疫染色により診断しえた骨格筋型極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症の1例"臨床神経学. 43. 568-570 (2003)
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[Publications] 但馬剛: "高速液体クロマトグラフィ法による有機酸・脂肪酸代謝異常症の酵素診断"日本マススクリーニング学会雑誌. 13. 39-45 (2003)