2001 Fiscal Year Annual Research Report
定常流ポンプによる循環維持が血液・血管の微細構造に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
13470280
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
妙中 義之 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 部長 (00142183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西中 知博 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (00256570)
武輪 能明 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (20332405)
巽 英介 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (00216996)
本間 章彦 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室員 (20287428)
築谷 朋典 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室員 (00311449)
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Keywords | 定常流補助循環 / 遠心ポンプ / 赤血球膜骨格 / せん断応力 / 腎輸入細動脈 / 血管平滑筋細胞 |
Research Abstract |
重症心不全患者への治療を目的とした補助循環法として臨床使用が期待される遠心血液ポンプには,溶血などの赤血球に対する傷害が開発上の問題として挙げられている.また遠心血液ポンプを用いた長期の定常流循環では,高度の脈圧低下など生体に様々な影響を及ぼすことが指摘されている.このため定常流補助循環により生体内に起きる特殊な環境を詳細に検討することは,将来的に患者の治療成績を向上させるためきわめて重要と考えられる.本年度は遠心血液ポンプ還流時の赤血球膜傷害について分子生物学的な見地からその機序に迫り,また定常流循環が生体の末梢血管組織に及ぼす影響について形態学的に興味深い知見を得ることができた. 1.赤血球の微細構造の変化とその発生機序の解明 我々は遠心血液ポンプによる赤血球傷害の機序を明らかにする目的で,赤血球膜骨格を構成する蛋白の一つであるBand 3 protein(B3)の分布状態に注目し,遠心血液ポンプによる溶血の主な原因であるせん断応力を負荷した時の赤血球膜の変化を分子生物学的手法により解析した.今回の実験では,赤血球に細胞膜を破壊しない程度の弱い(420s^<-1>)せん断応力を持続的に負荷し,赤血球膜のB3分布と細胞の大きさについて解析を行った.その結果,赤血球は負荷後1〜2時間後のB3密度に変化を認めないのに対し,3,4時間後にはB3密度の増加が認められた.また同時に赤血球膜の変形能の低下も認められ,遠心ポンプによる溶血には,これら緩やかなせん断応力の持続的な負荷により赤血球膜が傷害されている過程が存在することが示された. 2.血管器官の微細構造の変化とその発生機序の解明 本研究では腎臓輸入細動脈に焦点をあてて,長期定常流循環後の末梢血管の変化について病理組織学的検討を行った.定常流左心補助循環を約4週問に亘って施行された成ヤギ腎臓の末梢血管は,対照群と比較し,輸入細動脈の中膜に肥厚性変化を高頻度に認めた.特に傍糸球体領域では平滑筋細胞ないし平滑筋様細胞と判断される細胞の増生が顕著であった.さらに本領域は細胞増生のマーカーである抗proliferating cell nuclear antigen抗体陽性細胞の増加を認めた.このような定常流循環を施された成ヤギに認められた中膜肥厚病変は,一般的に観察される病的な動脈硬化性変化とは異なり,同病変の形成機序と定常流循環が作り出す特殊な血行動態との関連について詳細な検討を要すると考えられた.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Fukuda T., Taenaka Y., et al.: "Alterations of membrane-skeleton of the red blood cells during mechanical circulation with a centrifugal pump"ASAIO Journal. 47(2). 116 (2001)
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[Publications] Ohuishi H., Taenaka Y., et al.: "Morphological changes of the arterial systems in the kidney under prolonged nonpulsatile left heart bypass"ASAIO Journal. 47(2). 116 (2001)