2003 Fiscal Year Annual Research Report
末梢組織の炎症による脊髄後角シナプス伝達の可塑性変化のメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
13470318
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
馬場 洋 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (00262436)
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Keywords | 脊髄後角 / 痛覚過敏 / 可塑性変化 / 膜電位画像解析 / ホールセルパッチクランプ / 赤外線微分干渉画像 / サブスタンスP |
Research Abstract |
膜電位感受性色素を用いた膜電位応答の画像解析では、成熟ラットの後根付き脊髄横断スライス標本を作製し、記録を行った。膜電位感受性色素(RH414)にて染色後、後根から末梢組織炎症を想定した高頻度条件刺激を行うと、脊髄後角第II層を中心として深層にも興奮伝播が広がっていく様子がみられた。更に刺激を繰り返すことにより、その応答が増強していくことが観察された。この増強反応はNMDA受容体拮抗薬灌流投与で抑制されることから、興奮性アミノ酸シナプスの関与が示唆される。また、NK-1受容体阻害薬灌流投与で特に深層の応答が抑制されたことから、この高頻度条件刺激の繰り返しによる増強反応には神経ペプチドであるサブスタンスPが誘導されている可能性も考えられる。 近赤外線微分干渉顕微鏡を用いた可視化細胞からの電気生理学的記録実験では、生後4週齢ラットの後根付き脊髄スライス標本を使用し、炎症による脊髄後角神経細胞の可塑性変化の検討を行った。まず正常ラットよりスライス標本を作製し、ホールセルパッチクランプ法により記録を行った。末梢組織炎症の際、脊髄後角で誘導されると考えられるプロスタグランジンE2の灌流投与を行ったところ、比較的大型神経細胞において後根の電気刺激誘起に対する多シナプス性興奮性シナプス後電流応答の増強が観察された。この反応は末梢組織炎症時に脊髄後角内で起こる反応性増強のメカニズムである可能性が高いと思われる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 馬場洋, 小川真有美, 高松美砂子: "神経因性疼痛の脊髄内機序-PD.Wallのsuggestionから-"日本麻酔・薬理学会誌(JSPA). 15(1). 9-24 (2003)
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[Publications] Kohno T, Moore KA, Baba H: "Peripheral nerve injury in the rat alters excitatory synaptic transmission in lamina II of the dorsal horn"J Physiol. 548(Pt1). 131-138 (2003)
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[Publications] Baba H, Ji RR, Kohno T: "Removal of GABAergic inhibition facilitates polysynaptic A fiber-mediated excitatory transmission to the superficial spinal dorsal horn"Mol Cell Neurosci. 24(3). 818-830 (2003)
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[Publications] 岡本学, 馬場洋: "脊髄におけるノルアドレナリン作動性下行性痛覚抑制の機序"臨床麻酔. 27(8). 1251-1262 (2003)
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[Publications] 生駒美穂, 馬場洋: "炎症性疼痛の脊髄内メカニズム-特にPGE_2の役割について-"麻酔. 52(Suppl). S34-S46 (2003)
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[Publications] 安宅豊史, 若井綾子, 馬場洋: "ラット脊髄後角細胞におけるプロスタグランジンE_2の作用機序"脊髄機能診断学. 25(1). 13-17 (2003)