2002 Fiscal Year Annual Research Report
悪性黒色腫の転移・浸潤に関するマスター遺伝子の解析
Project/Area Number |
13470377
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井川 浩晴 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (10232159)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 淳一 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (50192703)
杉原 平樹 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20002157)
山本 有平 北海道大学, 医学部附属病院, 講師 (70271674)
守内 哲也 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (20174394)
|
Keywords | 悪性黒色腫 / ホメオボックス遺伝子 / アンチセンス / 浸潤能 / フローサイトメトリー / cDNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
動物胚の発生過程において形態情報を位置情報に変換する遺伝子はホメオボックス(HOX)遺伝子と呼ばる。これまでの報告により、肺癌細胞などにおいてHOXD3遺伝子の強制発現が細胞接着や運動性を増強させることが示唆された。そこで、HOXD3を発現しているヒト悪性黒色腫細胞株A375MにHOXD3アンチセンス発現ベクターを導入し、細胞の運動・浸潤性の変化および運動・浸潤性に関与する遺伝子の発現変化について解析した。 内皮下基底膜への浸潤モデルであるマトリゲルへの浸潤性、細胞外マトリクス成分であるビトロネクチンおよびラミニン-1に対する接触走化性、ならびにファゴカイネティック・トラック・アッセイにおいて、対照細胞クローンおよび親株と比べ、HOXD3アンチセンス発現クローンにおいて有意な低下を認めた。 ラミニンをリガンドとする接着因子である、インテグリンα1,2,3,6鎖β1,3,4鎖αvβ5鎖の発現をフローサイトメトリーにより解析した結果、各クローン間に有意差を認めなかった。従って、細胞進展・運動性の低下はラミニンに対する接着因子の発現変化によるものではないと考えられる。 HOXD3アンチセンス発現クローンと対照クローン間におけるmRNAの発現パターンを比較するためcDNAマィクロアレイ解析を行った。その結果、細胞骨格関連蛋白であるcdc42interacting protein 4(CIP4)、CIP4とホモロジーの高いKIAA0554、tropomyosin2 (TPM2)の発現が、HOXD3アンチセンス導入よって増強していた。TPM2やCIP4の異常発現は、アクトミオシン系の再構成システムに異常をきたし、その結果、細胞伸展・運動性の低下を引き起こすと考えられる。 以上の結果より、HOXD3遺伝子はヒト悪性黒色腫細胞の浸潤・運動性を制御するマスター調節遺伝子として働いている可能性が示唆された。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 大久保 佳子: "ホメオボックス遺伝子,HOXD3アンチセンス発現ベクター導入によるヒト悪性黒色腫細胞のinvitro浸潤性の低下"北海道医学雑誌. 76巻4号. 239-250 (2001)
-
[Publications] Okubo Yoshiko: "Transduction of HOXD3-antisense into human melanoma cells results in decreased invasive and motile activities"Clinical & experimental metastasis. 19(6). 503-511 (2002)