2001 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞における乳酸脱水素酵素遺伝子プロモーターのメチル化と発現制御に関する研究
Project/Area Number |
13470518
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
前川 真人 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20190291)
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Keywords | LDH / プロモーター / メチル化 / PCR-SSCP |
Research Abstract |
LDH-1の割合が増加し、且つLDH-2とLDH-3の間に過剰バンドの認められる異常アイソザイムパターンを示した網膜芽細胞腫細胞株NCC-RbC-51(R51)を用い、その異常パターンの原因について解析した。 1)抗LDH-A抗体を用いたウェスタンブロット法により、過剰バンドはLDH-Aサブユニットを有していると考えられ、SDS-PAGEにより正常のLDH-Aよりやや大きい分子量を有していると考えられた。 2)LDH-A cDNAをプローブとしたノーザンブロットの結果、正常よりわずかに高分子量の位置に薄いバンドを認めるのみであった。RT-PCRによっても正常のLDH-AmRNAの発現はみられなかった。 3)LDH-A遺伝子プロモーター領域のメチル化状態を解析したところ、5'non-coding regionに相当するexon a上のCpG配列は全てのサイトで100%メチル化されており、これが正常のLDH-Aの発現をほとんど抑制していると考えられた。 4)マウスでは精巣で発現するとされるエクソン0が報告されているため、R51細胞におけるエクソン0を調べた。その結果、メチル化を受けておらず、また、RT-PCRによりエクソン0から始まる転写産物が発現していた。この転写産物が蛋白に翻訳されると、通常のエクソン1の翻訳開始地点とは異なる場所から翻訳される可能性がある。実際、エクソン0内にAUGが3カ所あり、そのうち2カ所はすぐに翻訳停止するが、1カ所では通常の読み枠にインフレームでつながるため、この29アミノ酸増えた翻訳産物が、過剰バンド形成に関与していると考えられた。ノーザン、ウェスタンブロットの結果もそれを支持する。 5)bisulfite-PCR-SSCP法により、10種類の癌細胞株でLDH-A,B遺伝子プロモーター領域のメチル化について検討し、塩基配列決定により確認した。その結果、5種類(胃癌4種、膵癌1種)でLDH-AのmRNAの発現がなく、いずれもがLDH-B遺伝子プロモーター領域のメチル化に因るものと判明した。一方、LDH-A遺伝子のメチル化を示した癌細胞株はなかった。また、それぞれ25例ずつの大腸癌、胃癌を試料として検討した結果、LDH-A,Bのメチル化を示した症例は認められなかった。
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