2002 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞における乳酸脱水素酵素遺伝子プロモーターのメチル化と発現制御に関する研究
Project/Area Number |
13470518
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
前川 真人 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20190291)
|
Keywords | LDH / LDHB / プロモーター / メチル化 / cancer-testis antigen |
Research Abstract |
昨年の研究より、網膜芽細胞種のLDH異常分画は、LDHA遺伝子プロモーター領域のメチル化と通常体細胞で発現しているものとは異なるエクソンから始まる転写産物(タイプ2)によるものであることが判明した。そこで、種々の組織において、通常体細胞で発現している転写産物(タイプ1)と、新たに見いだしたタイプ2の転写産物がどの程度発現しているかを調べるために、cDNAパネルを用いてRT-PCRによって解析した。その結果、タイプ1の発現は、LDHAの活性が強い組織で強く、妥当な結果であった。一方、タイプ2の転写産物は、精巣で最も強く発現しており、膵臓や胎盤にも発現していた。さらに、種々の癌細胞(前立腺がん、大腸がんなど)で発現していた。エクソン0から始まるタイプ2転写産物は、マウスの精巣で発現していると報告されているため、ヒトでも精巣で最も発現が強いのは理解できる。また、癌細胞でも比較的発現が亢進している結果が得られたため、cancer-testis antigenの範疇に入るものと考えられた。 12種類の胃がん、大腸がんをはじめとした細胞株、および胃がん、大腸がんの臨床材料におけるLDHA, LDHBのメチル化について検討したところ、LDHA遺伝子のメチル化はいずれにも見られなかった。一方、LDHB遺伝子は5種の細胞株でメチル化しており、そのうちの4種は胃がんであり(6種中4種)、残る1種は膵がんであった。これらの細胞株ではLDHB遺伝子の発現が沈黙しており、プロモーターのメチル化によるものと類推された。臨床材料では25例の大腸がんにはLDHBのメチル化は認められなかったが、20例の胃がんのうち、3例で部分的なメチル化を認めた。LDHB遺伝子のメチル化について明らかにしたのは、今回の我々の報告が始めてである。
|
Research Products
(1 results)