Research Abstract |
社会システムや産業活動などに関係して現れる生産計画,環境計画,最適配送計画,スケジューリング,最適投資などを始めとする重要な問題の多くは,大規模かつ離散構造を有するシステムの最適化問題として捉えられる.本研究では,離散最適化問題の有用な構造的性質の抽出,及び,その性質に基づいた高速アルゴリズム開発に主眼を置き,最適化分野における基礎理論の構築を試みる.本科学研究費補助金の中間年度の成果として,以下が挙げられる. まず,離散最適化分野で基礎的かつ重要な劣モジュラ関数最小化に関連する様々な問題に対するサーベイ,ならびに,高速アルゴリズム開発などに有用と思われるいくつかの新しい知見を示した[S. Fujishige : Submodular Function Minimization and Related Topics. Optimization Methods and Software掲載予定]. さらに,離散最適化分野で基礎的な最大フロー問題,正則2部グラフの完全マッチング問題に対して以下の結果を得た. 最大フロー問題に対しては,従来の手法とは異なる斬新なアルゴリズムの開発に成功した.[S. Fujishige : A Maximum Flow Algorithm Using MA Orderings. Operations Research Letters採録予定]このアルゴリズムは,永持・茨木によって無向グラフの連結度の計算に有効に用いられたMA(最大隣接)順序付けの技法を用いるものであり,計算機実験の結果実用的なアルゴリズムであることも分かった. 正則2部グラフの完全マッチング問題に対しては,単純なO(m + n log n log Δ)時間アルゴリズムも開発した[K. Makino, T. Takabatake, and S. Fujishige, A Simple Matching Algorithm for Regular Bipartite Graphs, Information Processing Letters 84, (2002) 189-193.]ただし,n, m,Δは,それぞれグラフの点数,枝数,次数である. その他にも,単調論理関数の双対化問題に対する新たな知見を得たこと,経済学やゲーム理論で現れる粗代替性を有する関数と室田によるMnatural-凹関数とが同一の概念であることを,単位超立法体上で,示し,離散凸解析と数理経済学との新たな結び付きを明らかにしたこと,などが挙げられる.
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