2003 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉照射環境計測の高度化のための照射履歴記憶素子の開発
Project/Area Number |
13480139
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 勝憲 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70005940)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 充啓 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (60333861)
佐藤 学 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40226006)
長谷川 晃 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (80241545)
|
Keywords | 軽水炉炉内環境モニター / 照射温度履歴 / 炭化硅素 / イオンビーム加工 / 軽イオン照射 / ブリスタリング |
Research Abstract |
温度履歴を検出するために、炭化珪素の試験片上に銅メッシュを用いてマスキングをし、照射領域と非照射領域を作ったものに、ヘリウムイオンを室温で3MeVのエネルギーで注入し表面にはじき出し損傷によるスエリング領域を作製し、この試料に対して、最高1200℃までの加熱を行い、照射領域の剥離挙動とその他の領域の表面剥離の挙動を調べ、温度履歴検出性能について調べてきた。これまでに剥離が顕著になる温度がヘリウムの照射量に対して異なること、特に900℃までに剥離を起こさない低照射量の場合、その後の900℃の加熱によっても剥離が起こらないことが明らかとなっている。本年度はヘリウムを注入した基板の材料による挙動を調べるために、これまで使用していた多結晶炭化珪素(β-SiC)に加えて、より高純度でかつ結晶粒界の影響のない単結晶炭化珪素(α-SiC)への試験も行った。実験としては、1500℃までの加熱を行いヘリウムの昇温脱離スペクトル測定による放出ガス挙動を調べ、さらに微細組織観察によるキャビティ形成を調べた。これを元に剥離を起こすレンズ状バブルを形成する原因となるヘリウムの挙動と剥離のメカニズムについて検討を行った。 昇温脱離スペクトルの解析では、粒界の有無によるヘリウムの放出挙動に大きな変化は認められなかった。1200℃以上の焼鈍ではキャビティが粒界にトラップされることが我々のこれまでの研究で明かになっているが、温度履歴モニターに関わる表面隆起領域の体積変化や剥離が顕著な数百度以下の温度領域では、基板の結晶性の影響はほとんどないと結論された。また注入されたヘリウムの内、格子間位置にあると考えられるものは500℃から移動度を増し800℃で表面から放出されるがその割合は全注入量に比べて3%以下というわずかな量であった。ほとんどは基板中にトラップされていることが分かった。これらを総合すると、800℃以下の剥離は室温で大量に導入された照射欠陥の回復挙動によるものであり、ヘリウムによるキヤビティ形成の影響は1000℃以上で現れることが分かった。これらを基に、照射環境下における温度履歴記憶素子としての可能性を検討した。
|