2001 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染物質としての有機金属元素の瀬戸内海における分布とその生態系への影響
Project/Area Number |
13480157
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 鋼志 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助教授 (70183689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 守 名古屋大学, 博物館, 教授 (10113094)
三村 耕一 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助手 (80262848)
川井 浩史 神戸大学, 内海域機能教育研究センター, 教授 (30161269)
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Keywords | 有機金属元素 / 環境汚染 / 海洋 / 藤前干潟 / 中央太平洋 / 分析方法 / 海洋環境評価 |
Research Abstract |
実施初年度にあたり、分析方法の確立が急務であった。そこで、有機金属元素の抽出にあたり、有機溶媒として極性の強いメチルアルコールから、弱極性のジクロロメタン、極性の弱いベンゼンまでを用いて、土壌テストサンプルから有機金属元素の抽出を行い、回収率のチェックを行った。その結果、ジクロロメタンが最も効率よく有機金属元素を抽出しうることが明らかとなった。アルゴンプラズマ質量分析器による分析には、2%硝酸溶液にして測定を行う。抽出した有機金属化合物を無機態に変換するための酸化剤の検討も行った。そして、過塩素酸により有機物を分解し無機態へするのが、残差が少なく最適と思われる。ただし、現在の方法では、揮発性の高い砒素等は揮発している可能性があるため、マイクロウェーブ分解装置を用いて、硝酸により無機態へと変える方法を検討中である。 上記、ジクロロメタン抽出・過塩素酸分解法により、テストケースとして藤前干潟堆積物と中央太平洋堆積物の分析を行い、内湾域における有機金属汚染の実態の把握を試みた。分析した元素は、鉄・マンガン・クロム・コバルト・ニッケル・銅・亜鉛・砒素・セレン・スズ・カドミウムと鉛である。乾燥した堆積物に換算して、これらの元素濃度は0.01ppb〜1ppmと比較的低濃度であることが分かった。マンガンを除くいずれの元素も藤前干潟堆積物の方が10倍から100倍程度高濃度で含まれており、スズでその差が特に顕著である。これは名古屋港に入港する船舶の塗料に起因するものと考えられる。一方、マンガンのみ、中央太平洋の堆積物が高い濃度を示した。これは、有機質沈降粒子へのマンガン吸着が原因と思われる。 以上のように、有機金属元素の環境指標としての有効性が明らかとなり、分析方法も確立しつつある。次年度は、大阪湾堆積物の採取を行い、有機金属元素の分析を通して、環境汚染の実態を明らかにする予定である。
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