2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒ素の化学型態に基づいたバングラデシュの地下水ヒ素溶出機構の解明に関する研究
Project/Area Number |
13480159
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
田辺 公子 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 講師 (00179805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 幸男 宮崎大学, 工学部, 教授 (90148916)
瀬崎 満弘 宮崎大学, 工学部, 助教授 (80136803)
横田 漠 宮崎大学, 工学部, 教授 (90037888)
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Keywords | バングラデシュ / ネパール / ヒ素汚染 / 溶出機構 / ヒ素化学形態 / ヒ素三価 / ヒ素五価 / 還元状態 |
Research Abstract |
ヒ素の化学形態に基づいたバングラデシュの地下水ヒ素溶出機構の解明に関する研究に於いて、本年度は、バングラデシュ、ジェーソール県サムタ村とマルア村に加え、ヒ素汚染が確認されているネパールのナワルパスシ県クノール村において、約1ヶ月間、現地調査を以下のように行った。 1.クノワール村の飲料用井戸41個の調査を行い、ヒ素濃度が、0〜0.88mg・1^<-1>(平均0.33mg・1^<-1>)の範囲で、73%の井戸のヒ素汚染を確認した。ヒ素濃度は村の東部で低く、西部および南部に行くにしたがって、高くなる分布傾向を示した。また、ヒ素濃度は井戸深度50-65ftの所で高く、50ft以下および65ft以上では低い傾向を示した。 2.ヒ素に汚染された地下水による、自然界・生態系へのヒ素の拡散研究にため、マルア村で、土壌、地下水および植物の採取を行った。 3.サムタ村の定点水質観測を行った。 4.サムタおよびマルア村で行っている、安全で簡便な水供給ステム(PSF, GSF)の実証実験を継続し、実用化した。 本研究は本年度が最終年度であるため、水質分析、特にヒ素の形態分析等の結果をまとめ、サムタ村の地下水へのヒ素の溶出が、以下のように生じていると結論した。 サムタ村北部の地下水は、ヒ素の供給源である上部泥質層がなく、空気中の酸素を取り込み酸化状態にあり、ヒ素は五価で水に難溶な酸化水酸化鉄と共沈して、地下水中へのヒ素の溶出が少なくヒ素濃度が低い。地下水が村の北部から南部へ流れるにつれ、上部泥質層が厚くなり、酸素の供給がなくなり、地下水は還元状態となる。その結果、酸化水酸化鉄は水酸化鉄に還元され、鉄は三価から二価になり、地下水中に溶出し、ついでヒ素が五価から三価に還元されて、地下水中に溶出してくると考える。そのため、サムタ村では、村の北部でヒ素濃度が低く、南部に行くに従って高くなり、ヒ素は還元状態で溶出していると思われる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] H.Yokota, K.Tanabe, M.Sezaki, et al.: "Arsenic contamination in groundwater of Samta, Bangladesh"Science and Technology. 46, 11-12. 375-380 (2002)
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[Publications] 横田 漠, 濱部和宏, 田辺公子: "バングラデシュにおける地下水砒素汚染とその浄化"用水と廃水. 45.10. 82-87 (2003)
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[Publications] K.Hamabe, K.Tanabe, H.Yokota, et al.: "Arsenic Contamination in Groundwater and Arsenic-free Water Supply System in Bangladesh"Proceedings of The International Symposium on Safe & Sustainable Exploitation of Soil & Groundwater Resources in Asia. 26-43 (2003)
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[Publications] K.Hamabe, K.Tanabe, H.Yokota, et al.: "Arsenic Contamination of Groundwater and Low Cost Arsenic Removal Unit in Bangladesh"Proceedings of Civil Engineering in Development Countries ; Facing The Challenges. (CD). (2003)
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[Publications] K.Tanabe, H.Yokota, et al.: "Arsenic pollution of groundwater in Bangladesh on the analytical results of groundwater and soils in Samta and Marua village, Jessore district"Proceedings of Civil Engineering in Development Countries ; Facing The Challenges. (CD). (2003)
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[Publications] 谷村晋, 藤野善久, 田辺公子 他: "砒素汚染井戸封鎖による水汲負担増加量のシミュレーション評価"第44回日本熱帯医学会、第18回日本国際保健医療学会合同大会(ポスター). (2003)
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[Publications] 田辺公子, 濱部和宏, 横田 漠 他: "バングラデシュにおける地下水の水質とヒ素の挙動に関する研究 -ジェソール県サムタ村およびマルア村の調査-"第11回ヒ素シンポジウム講演要旨集. 23-24 (2003)