2002 Fiscal Year Annual Research Report
大気粉塵中有害金属の超高感度計測による東アジアからの越境汚染の実態の解明
Project/Area Number |
13480160
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 茂 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10137987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 知明 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (30348809)
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Keywords | エアロゾル / 有害金属 / 超高感度計測 / LA / ICP-MS / 越境大気汚染 / 東アジア / 起源推定 / CMB法 |
Research Abstract |
前年度までに設計・試作を行ったレーザアブレーションチェンバーを用いたレーザーアブレーション(LA)/ICP-MSによる大気粉塵中有害金属分析の性能評価を行った。その結果、LA/ICP-MSによる大気粉塵中有害金属の検出限界値(標準偏差の3倍値より計算)は、機器中性子放射化分析法(INAA)によるものとほぼ同程度かそれ以下であり、また繰り返し測定(n=8)による測定精度(相対標準偏差)はほとんどの金属で10%以下であったことから、本法による大気粉塵中有害金属分析の信頼性が確認された。本法はINAAのように原子炉等の危険で特殊な装置を必要とせず、また分析に必要な試料量も極めて微量(大気粉塵量にして約10μgで酸分解法の約10分の1以下)であることから、大気粉塵中有害金属の超高感度計測が可能になったと言える。 次に、東アジアからの大気汚染物質の長距離輸送の実態と輸送過程を解明するために、大気粉塵中有害金属の実態調査を行った。具体的には、日本周辺の離島(利尻島)において、前年度までに開発したエアロゾルサンプラーを設置し大気粉塵の採取を行った。また並行して、発生源データを把握するために中国北京市(清華大学)において大気粉塵の採取を行った。採取したそれぞれ500を越える大気粉塵試料は、本研究により開発されたLA/ICP-MS分析法を用いて15種類の金属の測定が行われた。分析結果を基に、Chemical Mass Balance法(CMB法)を用いて中国北京市における大気粉塵の発生源を推定した結果、土壌と石炭燃焼がそれぞれ約25%ずつ寄与していると推定された。また東アジアからの大気の流れを推定する後方流跡線解析の手法を用いて大気粉塵中金属の分析データを解析した結果、東アジアから日本近海への大気粉塵の長距離輸送の実態と輸送過程が明らかとなった。
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