2001 Fiscal Year Annual Research Report
肺上皮細胞の気液界面培養を利用する気体のバイオアッセイ手法の確立
Project/Area Number |
13480163
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 康行 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (00235128)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
迫田 章義 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30170658)
|
Keywords | 気液界面培養 / 肺胞上皮 / 肺気道上皮 / バイオアッセイ / 有機溶媒 / 浮遊粒子状物質 |
Research Abstract |
今年度はまず,肺上皮細胞(肺胞由来A549細胞および肺気道由来Calu-3細胞)の気液界面培養を用いた揮発性有機溶媒の簡便なバッチ式ガス負荷装置を開発した.これは1リットルのガラスデシケータの底面に,気液界面培養のための半透膜・有機溶媒添加のための液だまり・湿度保持のための水たまり,を持つものである.有機溶媒は液として添加されるが,短時間のうちに蒸発し、添加量に対応した気相濃度に達して平衡となる.ガスの濃度は2日後でも70-80%保持された. この装置を用いて,肺胞と肺気道由来の細胞を気液界面培養すると,前者は非常に低い膜電気抵抗値のままであったが,後者は徐々にそれが上昇し,肺胞のそれの10倍以上に達した.これは,in vivoと同じ状況に細胞を置くことで,それぞれの由来組織に応じた分化形態をそれぞれの細胞が部分的に再現したものと考えられた.このような状況下で,細胞表層に液層の有無でどの程度毒性が異なるかを調べたところ,液層中のガス拡散のために,細胞表層の正味の負荷濃度が特に負荷直後において低下し,結果的に2日後の生存率は有意に高まった.また,そのED50値を動物実験のLD50値と比較すると,厚い気道細胞への負荷ではED50は大きかったが,薄い肺胞由来細胞への負荷ではED50は動物実験のLD50とほぼ同等の値となった.このことから,人体への毒性評価系としては,特に肺胞の気液界面培養によるガス直接暴露が望ましいという結果が得られた. これらの結果に基づいて,A549細胞の気液界面培養を利用し,近年深刻な問題となっている浮遊粒子状物質の直接負荷実験を進めている.従来は例えばハイボリュームエアーサンプラーなどで捕集された粒子をDMSOなどの有機溶媒を用いることで毒性物質を溶出させた後に細胞試験などのバイオアッセイに供しているが,もし直接に気液界面培養した細胞へ負荷する手法が確立できれば,in vivoの負荷形態をよりよく模すだけでなく,その感度も著しく高くなることが期待される.次年度では,この粒子状物質の直接負荷による評価法の確立に焦点を当てて研究を進めていく予定である.
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Y.Sakai, R.Shoji, B.-S.Kim, A.Sakoda, M.Suzuki: "Cultured human-cell-based bioassays for environmental risk management"Environ.Monit.Assess. 70. 57-70 (2001)
-
[Publications] 酒井康行, 迫田章義: "培養細胞を用いた新規の環境評価・医療システムの開発"生産研究. 53,3. 165-168 (2001)