2003 Fiscal Year Annual Research Report
ディーゼル排気微粒子(DEP)による生殖器・循環器作用の生理学的要因に関する研究
Project/Area Number |
13480164
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
局 博一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30142095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 正貴 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30205273)
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Keywords | ディーゼル排気微粒子 / 大気汚染 / 繁殖障害 / 循環器障害 / DEP / 活性酸素種 / 細胞傷害性 / 心筋細胞 |
Research Abstract |
本研究はDEPが心筋細胞に与える影響について、活性酸素種との関連性を明らかにすることを目的として行った。Wistarラット新生仔の心室をコラゲナーゼ処理して得られた単一分離心筋細胞を培養し、実験に用いた。DEPE曝露による細胞傷害性はMTT assayによる生細胞数測定、培養液中に漏出したLDH活性と酸化ストレスの指標となるTBARSを測定することにより行った。また、O_2-、H_2O_2、OH、それぞれのスカベンジャーであるSOD、catalase、MPGの存在下でDEP曝露を行うことにより、これらの活性酸素種が細胞傷害性へ及ぼす影響を調べた。DEPEは曝露時間、濃度依存的に生細胞数を減少させた。また、細胞傷害性には曝露初期の影響が大きいことが示唆された。TBARSの測定結果より、DEPE曝露後、通常の培養液で培養している間に過酸化脂質の上昇がみられ、DEPE曝露後に開始した連鎖的脂質過酸化反応がDEPE除去後も進行していることが示唆された。DEPE曝露により培養液中のLDH活性はDEPEの濃度依存的に増加した。DEPE曝露による細胞傷害性はSODやcatalaseにより抑制された。また、MPGはSOD、catalaseと同程度の細胞傷害抑制作用を示したことからOHがDEPEによる細胞傷害の直接的な傷害因子の一つであり、O_2-やH_2O_2は、主にOHの発生源として細胞傷害性に関与していることが示唆された。本研究により、DEPEによる心筋細胞への傷害性にはO_2-、H_2O_2やOHなどの活性酸素種が関与し、また心筋細胞由来のNOは本実験条件では関与する可能性が低いことが示唆された。本研究で見られたDEPE曝露による心臓でのLDHの上昇と活性酸素種の増加は、in vivoで大気中の微粒子をラットに吸入曝露した研究報告と一致する。このことはin vitroでの心筋細胞を用いた研究が、in vivoでのDEPの循環器系に対する作用の解明に有用であることを示唆している。今後、DEPの循環器系に及ぼす作用の研究において、心筋細胞を用いたin vitroの研究が重要な役割を担うと考えられた。
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