2003 Fiscal Year Annual Research Report
突然変異と細胞がん化の原因となる放射線誘発長寿命ラジカルの性質
Project/Area Number |
13480171
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
渡邉 正己 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20111768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 啓司 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00196809)
児玉 靖司 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (00195744)
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Keywords | 長寿命ラジカル / ビタミンC / 細胞突然変異 / 細胞がん化 / 染色体異常 / 細胞死 / スルフィニル基 |
Research Abstract |
我々は、X線あるいはγ線照射された哺乳類細胞に室温で20時間程度の寿命を持つ超寿命ラジカル(LLR ; Long Lived Radical)が生ずることをESRによるラジカル解析によって発見した。さらに、このLLRは、細胞内の疎水性のバイオポリマー部位のシステインなどのスルフィニル基を持つタンパク質に生じていることなどがわかった。このLLRは、放射線被曝後数十分から数十時間後にビタミンCやエピガロカテキンあるいは没食子酸など植物ポリフェノール類で処理することによって完全に消失することができる。活性の高いOHやO_2^-ラジカルの寿命は200ナノ秒以下であるので、ビタミンCなどの処理で捕捉されるラジカルは、LLRであると考えられる。また、LLRの消失に伴って細胞突然変異や細胞がん化誘導は抑制できるが、染色体異常や細胞死誘導を抑制できない。システアミンやDMSO処理でOHやO_2^-ラジカルを消去すると細胞死や染色体異常誘導は抑えられるが、細胞突然変異や細胞がん化誘導を抑制することはできない。ビタミンCを細胞の一生涯に渡って処理すると、デロメアの短縮が抑制されるとともに細胞の寿命の延長および遺伝的不安定化の低減化ができる事がわかった。これらのことから、我々は、LLRこそが放射線による細胞の突然変異と細胞がん化の主因であると結論している。 これら一連の結果は、これまで放射線生物学的に信じられてきた"放射線突然変異や発がんの原因は活性が高い酸素ラジカル種(ROS)がDNAや染色体を破壊することである"という予想を覆すものである。加えて、ヒトにおける突然変異や発がんがタンパク質に生じた変異を起源とするという極めて新規性が高く、放射線の遺伝影響の本体を理解し、放射線被曝による発癌や突然変異誘発の危険度を軽減する方法の開発に資する極めて重要な知見である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tominaga, H., Kodama S, Matsuda, N., Suzuki, K., Watanabe, M: "Involvement of reactive oxygen species (ROS) in the induction of genetic instability by radiation"J.Radiat.Res.. (In press). (2004)
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[Publications] Urushibara A, Koddama S, Suzuki K, Desa M.B., Suzuki F, Tsutsui T, Watanabe M.: "Involvement of telomere dysfunction in the induction of genomic instability by radiation in scid mouse cells"Biochem Biophys Res Commun.. 313・4. 1037-1043 (2004)
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[Publications] Undarmaa, B., Kodama, S., Suzuki, K., Niwa, O., Watanabe, M.: "X-ray-induced telomeric instability in Atm-deficient mouse cells"Biochem Biophys Res Commun.. 315. 51-58 (2004)
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[Publications] Hamada, N., Kodama, S., Suzuki, K., Watanabe, M.: "Gap junctional intercellular communication and cellular response to heat stress"Carcinogenesis. 24・11. 1723-1728 (2003)
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[Publications] Kumagai, J., Masui, K., Itagaki, Y., Shiotani, M., Kodama, S., Watanabe, M., Miyazaki, T.: "Long-loved mutagenic radicals induced in mammalian cells by ionaizing radiation are mainly localized to proteins"Radiat.Res.. 160・1. 95-102 (2003)
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[Publications] Kashino, G., Kodama, S., Nakayama, Y., Suzuki, K., Fukase, K., Goto, M., Watanabe, M.: "Relief of oxidative stress by ascorbic acid delays cellular senescence of normal human and Werner syndrime fibroblast cells"Free Radical Biology and Medicine. 35・4. 438-443 (2003)