2002 Fiscal Year Annual Research Report
誤りがちなDNAポリメラーゼΚのマウス精巣における特異的な発現機構の解析
Project/Area Number |
13480229
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大森 治夫 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (10127061)
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Keywords | DNAポリメラーゼ / DNA損傷 / 突然変異 / 精巣 / 精子形成 / 不稔性 / ステロイドホルモン / 発がん |
Research Abstract |
精製したヒトPolκ酵素を用いたin vitroでの実験結果から、Polκがベンゾピレン(BaP)などによるDNA損傷をエラーフリーにバイパスすることが明らかになった。実際、Polκ遺伝子を欠損したマウスES細胞はBaP処理に対して野生株よりも高い感受性を示し、突然変異の発生頻度は上昇する。しかし、ヒトあるいはマウスなどはそのような外部からの化学物質によるDNA損傷をバイパスする機能のために複製忠実度の低いPolκを保存してきたとは考えにくい。おそらく、Polκは体内で発生する内在的なDNA損傷のバイパス合成にも機能していると考えられる。BaPと構造的類似性を持つステロイドホルモンがBaP同様のDNA損傷を生じることから、そのようなステロイドホルモンによって生じるDNA損傷のバイパス合成にPolκが関与する可能性を検証しつつある。 マウスPolκ遺伝子の発現は精巣において固有の制御を受けている。先ず、転写開始点は二ケ所存在し、上流のものは多くの組織で使われるが、下流のものは精巣特異的である。精巣で最も強く発現されているmRNAは約3kbであり、それ以外に他の組織にも共通の5kbの長さのものも観察される。これは転写開始点の違いによるのではなく、むしろ異なる位置でPolyA化が起こるためであると考えられる。約5kbのmRNAはその3'非翻訳領域にAREと呼ばれるmRNAを不安定することが知られている配列が10回繰り返して存在するが、精巣特異的な約3kbのmRNAは3'非翻訳領域にARR配列を全く持たない。その結果として、約3kbのmRNAは安定であるために、それが蓄積するのでPolκ遺伝子の発現が精子では高いように見える。今後はこのようなPolyA化によるmRNAの安定化の制御様式の分子メカニズムの詳細を明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Suzuki, N.: "Translesion synthesis by human DNA polymerase κ on a DNA template containing a single stereoisomer of dG-(+)-or dG-(-)-anti-N(2)-BPDE (7,8-dihydroxy-anti-9,10-epoxy-7,8,9,10-tetrahydrobenzo[a]pyrene)"Biochemistry. 41. 6100-6106 (2002)
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[Publications] Ogi, T.: "Polκ protects mammaliancells against the lethal and mutagenic effects of benzo[a]pyrene"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 99. 15548-15553 (2002)
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[Publications] Frank, E.G.: "Translesion replication of benzo[a]pyrene and benzo[c]phenanthrene diol epoxide adducts of deoxyadenosine and deoxyguanosine by human DNA polymerase"Nucleic Acids Res.. 30. 5284-5292 (2002)
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[Publications] Yang.I-Y.: "Mammalian Translesion DNA Synthesis across an Acrolein-derived Deoxyguanosine Adduct"J.Biological Chemistry. 278(in press). (2003)
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[Publications] Shimizu, T.: "The absence of DNA polymerase κ does not affect somatic hypermutation of the mouse immunoglobulin heavy chain gene"Immunology Letters. 86(in press). (2003)