2002 Fiscal Year Annual Research Report
シグナル伝達とアクチンフィラメントとのインターフェースとしてのERM蛋白質群
Project/Area Number |
13480237
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
月田 早智子 京都大学, 医療技術短期大学部, 教授 (00188517)
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Keywords | エズリン / ラディキシン / モエシン / ERM蛋白質 / アクチン / CD44 / 接着分子 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
細胞の接着、運動におけるアクチンフィラメントの機能の重要性を考えるときアクチンフィラメントと細胞膜の結合点は、シグナル伝達の観点からきわめて重要な解析対象であるといえる。ERM(Eznn/Radixin/Moesin)蛋白質は、細胞膜貫通蛋白質とアクチンフィラメントに各々N末半分とC末半分で結合することにより、アクチンフィラメントと細胞膜の結合をつかさどる重要な蛋白質群であり遺伝性の神経線維腫症2型のがん抑制遺伝子産物に酷似している。これまでの我々を含む複数の研究室における細胞生物学的解析からERM蛋白質は種々の細胞内情報伝達分子と結合し、Rhoなどが関与する細胞内情報伝達系において重要な役割を果たすと考えられる。 本研究ではラディキシンノックアウトマウスの作成を行った。プロモータトラツプ型のターゲティングベクターを用いた結果、マウスES細胞において正しいhomologous recombinationが行われた細胞を得ることができた。さらにネオマイシンの濃度をあげることにより、ラディキシンのダブルノックアウトES細胞を得ることができた。このES細胞をマウス胚に注入したところ、メンデルの法則に従いラディキシンノックアウトマウスが一見正常に生まれてきたが、直接型ビリルビンの血中濃度が上昇するDubin-Johnson症候群型の高ビリルビン血症を示すことがわかった。そこで、直接型ビリルビンのトランスポーターとしてしられている肝細胞毛細胆管部の細胞膜蛋白質であるmulti-drug resistance protein2(MRP2)の分布を調べたところ、MRP2の毛細胆管細胞膜での発現が、ラディキシンノックアウトマウスにおいては野生型のマウスに比べて、特異的に20%のレベルまで大幅に減少していることが確認された。コレステロールや胆汁酸のトランスポータとしてしられているP-glycoproteinsやapical markerのCD26などの毛細胆管細胞膜での発現には若干の減少がみられる程度であった。さらに、MRP2とラディキシンの結合が生化学的に示され、MRP2の分布がラディキシンにより特異的に制御されることが明らかにされた。ラディキシンノックアウトマウスにおいてMRP2の毛細胆管細胞膜への分布が減少すると直接型ビリルビンの毛細胆管への排泄が減少し、その結果として血中の直接型ビリルビンの濃度が上昇すると思われた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Kikuchi, S.: "Radixin deficiency causes conjugated hyperbilirubinemia with loss of Mrp2 from bile canalicular membranes"Nature Genetics. 31. 320-325 (2002)
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[Publications] Shimizu, T.: "Structural basis for neurofibromatosis type 2 : Crystal structure of the merlin FERM domain"J.Biol.Chem.. 277. 10332-10336 (2002)
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[Publications] Yonemura, S.: "Rho-independent and -dependent activation mechanisms of ezrin/radixin/moesin proteins"J.Cell Sci.. 115. 2569-2580 (2002)
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[Publications] Hamada, K.: "Structural basis of adhesion-molecule recognition by ERM protein revealed by the crystal structure of the radixin-ICAM-2 complex"EMBO J.. 22. 502-514 (2002)