2002 Fiscal Year Annual Research Report
オーガナイジングシグナルと視蓋・小脳分化のコンピテンス
Project/Area Number |
13480243
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
仲村 春和 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (90079690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 達也 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 日本学術振興会特別研究員
渡邉 裕二 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助手 (80301042)
舟橋 淳一 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (00270827)
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Keywords | 中脳胞 / 後脳胞 / オーガナイザー / Fgf8 / Ras-ERK経路 / 小脳分化 |
Research Abstract |
中脳胞背側は視蓋へと分化し、後脳胞背側は小脳へと分化する。視蓋と小脳ではその構造、分化様式は全く異なるが,両者は峡部で境を接しており,峡部からのオーガナイジングシグナルによって分化する。オーガナイジングシグナルとしてFgf8が有力視されている。Fgf8にはスプライシングの違いにより8つのイソフォームが存在する。これまでにFgf8aを強制発現させた場合は視蓋が増大し,Fgf8bを強制発現させた場合は中脳胞の背側がすべて小脳へと分化すること、さらにこのFgf8aとFgf8bの違いはシグナルの強弱に帰し、強いFgf8シグナルを受け取るところが小脳として分化することを明らかにした。 本研究補助により、Fgf8シグナルはどのように細胞内で処理され、小脳、視蓋の分化を導くかという問題設定のもとに研究を遂行した。まず、Fgf8シグナルが、Fgf受容体で受容された後Ras-ERKシグナル経路が活性化されるかどうかを検索した。活性化ERKに対する抗体による活性化ERKの分布をみると、Fgf8mRNAの発現している領域でERKは燐酸化されており、Fgf8bを強制発現すると、異所的なFgf8bの発現部位に一致してERKの活性化がみられた。Fgf受容体の阻害剤SU5402の適用するとその活性は消失した。ドミナントネガティブ型のRasを強制発現すると、後脳胞はその発生運命を変え、小脳ではなく、視蓋として分化した。Fgf8bとドミナントネガティブ型Rasの共発現ではFgf8bの効果はうち消されたが、Fgf8aとの共発現では相乗的な効果が得られた。このことはRas-ERK経路はFgf8bの下流で活性化され、Fgf8aの下流ではないことを示唆している。 これらのことより、Fgf8の強いシグナルにより、Ras-ERKシグナル経路が活性化されると小脳分化に働くこと、視蓋の分化には別のシグナルトランスダクションシステムが活性化されることが示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Sugiyama, S., Nakamura, H.: "The role of Grg4 in tectal laminar formation"Development. 130. 451-462 (2003)
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[Publications] Matsunaga, E., Katahira, T., Nakamura.H.: "Role of Lmx1b and Wnt1 in mesencephalon and metencephalon development"Development. 129. 5269-5277 (2002)
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[Publications] Kishimoto, K.N., Watanabe, Y., Nakamura, H., Kokubun, S.: "Ectopic bone formation by electroporatic transfer of bone morphogenetic protein-4 gene"Bone Aug.. 31・2. 340-347 (2002)
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[Publications] 松永英治, 仲村春和: "視蓋領域形成におけるPax6とPax3/7の役割"実験医学増刊. 20・5. 34-40 (2002)
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[Publications] 仲村春和: "中枢神経系の領域はどのようにして形成されるか"実験医学増刊. 20・5. 12-20 (2002)
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[Publications] 佐藤達也, 仲村春和: "視蓋/小脳の分化とFGFシグナル"実験医学増刊. 20・2. 213-220 (2002)